ユダヤ系のゼレンスキーの曾祖父と祖父の3人の兄弟は、ホロコーストで命を奪われていた。そして、唯一生き残った祖父はソ連軍の兵士の一人として、ドイツ軍と戦っていた。
真実は、ウクライナの側にある。法律が支持するのもまた、ウクライナだ。ウクライナはプーチンのうそを前に、真実が唯一のストーリーになるまで、それを広く伝え続ける必要がある。
重要性を増す“もう一つの”武器
ウクライナは自国の理念の正当性を支え、ロシアのもくろみの力をそぐため、意図的に法律を利用する(ローフェアを展開する)必要がある。そして、武力の代わりに法律を使って戦うローフェアにおいて、ますます重要になるのが情報だ。
世界は二度と戦争の惨禍に見舞われることがないようにと、戦時国際法、国際人権法、そしてルールに基づく国際秩序の多くを定めた。ロシアの行動は違法だと国際社会に広く訴えることには、とてつもない力がある。
また、情報を用いるローフェアは、ロシア国内の人々の戦意に影響を与える強力なツールにもなるだろう。戦争において、人々の戦う意思がいかに重要であるかは、どれほど強調してもし過ぎることはない。
そして、兵士たちが戦意を持ち続けるためには、自らの行動が合法だと確信することが極めて重要だ。戦闘において、彼らが命じられたことを成し遂げるためには、自国の行動が合法かつ正当であると信じていなければならない。
だが、モスクワと世界各地では、ロシアの侵攻に対する抗議デモが続いている。ロシア軍の士気は、低いと伝えられている。ウクライナが展開するローフェアは、ロシアの行動の合法性をさらに危うくし、より多くのロシア人の戦意を奪うことに役立つだろう。
ローフェアを展開すれば、それでこの戦争が止められるわけではない。だが、それでも他に類を見ない形で、プーチンへの政治的圧力を強めることにはなる。侵攻に反対するすべての市民、逃亡するすべての兵士たちが、必死で国民から愛され、世界から尊敬されたいと願うリーダーに、ダメージを与えることになる。