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ビジネス

2022.03.11

日本代表チーム「NCCR」が挑む、世界を変えるイノベーションとは?

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NCCRの副田幸暉、笠井涼平

YouTubeに限定で公開されたプレゼンテーションは、53秒の短いものだった。しかし、窓の外の騒音に顔をしかめる学生が出演する、この簡潔にまとめられた動画が、彼ら「NCCR」を日本代表として世界の舞台に送り出すものとなった。純朴な学生ふたりが世界に挑戦する課程を、連載としてお伝えする。


学生が世界に挑戦する、その舞台であるRed Bull Basementとは、レッドブルが2018年から開催している「学生生活と世界を変えるチャンスが得られるグローバルイベント」だ。

イベントの大枠はビジネスコンテストと理解してもらえれば間違いはないのだが、ただ学生起業家たちをピッチに参加させて評価するのではなく、各国の代表に対して強力なサポートを提供する点が幾多のビジネスコンテストとは大いに異なる。世界を舞台に活躍するエキスパートやメンター、グローバルな学生たちとのネットワーク構築やコラボレーションの機会、そしてワークショップによる学びも得られる。

たとえば、英国・ブルネル大学のチーム「Lava Aqua X」はシャワーの排水を再利用できる洗濯機というアイデアで2020年のグランプリに輝いた。共同設立者のひとりパラムビア・バチュはRed Bull Basementについてこう語っている。

「わたしたちは、このイベントを通じてプロトタイプの制作と知的財産・商標についての準備を進められましたし、ワークショップなど様々なアクティビティから多くの知識を得られました。また、サスティナビリティと節水をアピールしたいと思っていたのですが、このイベントのリーチの長さを活かして世界中にアピールすることもできました」

学生を対象とするこのイベントへのエントリーは自分たちのアイデアを説明する動画を期間内に提出すること。2021年度の応募期間は9月1日から10月24日までだった。

応募された動画を採点したのは、株式会社マクアケ・専門性執行役員 / R&Dプロデューサーの北原成憲、元FacebookJapan執行役員の馬渕邦美、そしてForbes JAPAN Web編集部 編集長の谷本有香。


学生たちと議論する北原成憲、馬渕邦美

彼ら3人からなるジャッジパネルが、応募された各アイデアについて、実現可能性・インパクト・クリエイティビティ・オンライン投票での得票数を元に審査を行う。そしてグローバルファイナルに進出する日本代表チームを選出する。

この手の議論は、しばしば紛糾するものだ。学生たちのみずみずしいアイデアはどれもすばらしく、社会問題を解決する明るい未来を描くものばかりだからだ。しかし、ジャッジパネルの真剣さと裏腹に代表チームはあっさりと決まる。決めては、あまりにも見事な着眼点。選ばれたのは三重大学のチーム「NCCR」だった。 

「NCCR」とは、Noise Cancelling Curtain Railの略。非常にわかりやすいチーム名の通り、彼らが作ろうとしているのは、ノイズキャンセリング機能を搭載したカーテンレールだ。すでに存在する遮音カーテンでは部屋が暗くなってしまい、強い閉塞感を生み出してしまう。ならば、と考えたアイデア。カーテンレールが外部の騒音の逆位相の音を作りだし、屋内にいる人物の耳の位置をAIカメラにより検知し、その音を照射。それにより、個人の独立した静かな空間が保たれる、とするものだ。 

谷本は彼らのアイデアを評し、こうメモを残している。「カーテンレールに! ノイズの問題はコロナ禍における多くの人の課題。いい視点」。

Red Bull Basementに限らず、こういったイベントでは社会課題に注目するあまり、変えようとする対象が大きくなりがちだ。サプライチェーン全体の取り組みとしなければならないような、理想としては素晴らしいものの実現可能性が低いアイデアであったり、または、対象が広すぎるあまりすでに同様の取り組みがはじまっているアイデアも含まれる。

その点で、NCCRは、新たなライフスタイルの構築がまさに進められているいま、個人が抱える問題を鋭く見つけだした点が高く評価された。そんなNCCRは三重大学工学部総合工学科・三年生の笠井涼平と、広島大学理学部物理学科・四年生の副田幸暉のふたりによるチームだ。

昨年このRed Bull Basementを知り、いくつものアイデアをエントリーしたものの選に漏れた笠井が、今年リベンジを図るにあたって「実現されていないことを思いつくのが副田だったので声をかけた」のがチーム結成のきっかけだ。
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文=青山 鼓

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