経済・社会

2022.03.06 07:00

森林火災のリスク、2100年までに50%上昇と国連環境計画が警鐘

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地球温暖化と土地利用の変化によって、大規模な森林火災の発生リスクが2100年までに50%上昇することが、国連環境計画(UNEP)が2022年2月23日に発表した画期的な報告書で明らかになった。世界的な研究者50人以上が共同でまとめたこの報告書は、壊滅的な森林火災が相次いだ1年間を受け、火災対応を根本から改めるよう、各国政府に呼びかけている。

報告書によると、大規模な被害をもたらす森林火災の発生リスクは急上昇し、2030年までに14%、2050年までに30%増えるという。

気候変動と土地利用の変化が「世界的な森林火災の危機」を引き起こしており、燃焼時間が長く燃焼温度も高い巨大火災が発生する可能性があると、報告書には書かれている。また、これまで森林火災が発生しなかった北極圏などの地域も影響を受けるとしている。

報告書を作成した研究者たちは各国政府に対し、森林火災に対するアプローチを大幅に転換し、消火よりも火災予防に力を入れるよう呼びかけている。そのほうがより大きな効果が見込めるためだ。

現状では、政府による火災対応支出のうち、計画立案と予防策、備え、復旧に充てられている割合は1%に満たない。しかし、報告書に盛り込まれた「Fire Ready Formula(火災に備える基本原則)」では、その割合を3分の2に増やすよう提案している。

そして、残りの3分の1を消火に充てるべきだとしている。現在は、半分以上が消火のための支出だ。

科学者たちは、より効果的に森林火災を防ぐために、国際協力の推進と、先住民の持つ知識の有効活用、科学的根拠にもとづいた監視システムの使用を提案している。

生態系の健全な働きに不可欠な火事もあり、報告書はそうした事象を「ランドスケープ・ファイヤー(landscape fires、景観の火事)」と呼んでいる。しかし、現在問題になっているような森林火災については、「通常ではないかたちで自由に燃焼する異常な植生火災」であり、環境的・社会的・経済的なリスクをもたらすと述べている。

こうした森林火災は近年、米国やシベリア、欧州、中国、オーストラリアなどの国々の一部を含む広大な土地を壊滅に追い込んでいる。専門家によれば、森林火災に起因する汚染は多くの健康問題を引き起こしており、毎年膨大な数の死者を出す原因になっている可能性があるという。

気温の急上昇や、強度を増す風、乾燥して燃えやすくなった環境──こうした要素が気候変動で増幅された結果、森林火災の発生と延焼の確率は上がっている。そして、火災が排出する二酸化炭素も、気候変動をあおっている。森林火災に限らず、他の気候災害も、今後数十年で増加すると予想されており、深刻さと頻度が増す見込みだ。

UNEP事務局長のインガー・アンダーセンは、「政府による現在の森林火災対応では、間違ったところに資金が投じられていることが多い」と語った。「大規模な森林火災のリスクを最小限に抑えるべく、いっそうの備えが必要だ。たとえば、リスクを減らすためにより多くの資金を投入し、地元社会との協力体制を構築し、気候変動に立ち向かうための世界的な取り組みを強化しなければならない」

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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