メタン漏出状況に関するIEAの最新報告書によれば、各国政府は、エネルギーセクターにおけるメタン漏出量を、70%という「懸念すべき」幅で過少報告しているという。IEAの報告書では、人工衛星の追跡データなどを用いて漏出量をモニタリングしている。
主に石油、天然ガス、石炭からなるエネルギーセクターからのメタン漏出は、人間活動に起因するメタン排出量の約40%を占めている。エネルギーセクターからのこうした漏出量は、前年比で5%増加したとIEAは報告している。
ただしIEAによれば、2019年の水準に比べれば漏出量は下回っており、漏出削減に向けた取り組みの効果が出始めている可能性がある。IEAはそう述べつつも、漏出しているメタンの量は、欧州の電力セクターが1年間に消費する天然ガス量に匹敵すると指摘している。
漏出メタンを捕捉していれば、現在のようなガス価格の高騰は避けられたかもしれないとIEAは述べている。
IEAのファティ・ビロル事務局長は、各国がこの問題の解決に二の足を踏んでいるのには、いくつかの理由があると述べたうえで、ガス価格が高騰していることや、漏出を防ぐための技術が広く利用可能になっていることを考えれば、こうしたメタン漏出のほぼすべてを「実質的にコストをかけずに回避できる」可能性があると指摘した。
こうした解決策は、「多くのケースでは、利益を生む場合すらある」と、IEAは報告書のなかで述べている。
IEAは、人工衛星からのモニタリングにより、2021年に15カ国の石油・ガス採掘現場から大量のメタンが漏出していることを検知した。IEAによれば、「テキサス州のパーミアン盆地での大規模な漏出」のほか、中央アジアの各地、とりわけトルクメニスタンで「極めて大量の漏出」が観測された。その両者を合わせると、2021年に人工衛星で確認された大規模な漏出例の3分の1を占めたという。
2021年にIEAが推定した石油・ガス操業によるメタン漏出量の約6%は、人工衛星により確認された、超大規模な漏出例に起因するものだった。
メタンは強力な温室効果ガスであり、産業革命以降の地球の気温上昇の30%前後はメタンに起因している、とIEAは述べている。メタンは、強力な温暖化効果と、短命な性質(二酸化炭素よりもはるかに速く消散する)を持っているので、その漏出量を削減すれば、温暖化抑制に関して迅速な効果を得られる可能性がある。専門家らはメタンを、気候目標の達成に向けた重要なターゲットに据えている。