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2022.03.02 07:30

ジェームス・カフナーに聞く、ウーブン・シティは何を目指すのか?

ウーブン・プラネット・ホールディングス代表取締役CEO ジェームス・カフナー


よって、この会社は20代後半から30代の若い世代を中心に構成されている。オフィスの食堂に入ると、「あそこにいるのはソフトウェア部隊、隣が建築系、食と農の専門家、ファイナンスのチームもいます」と、アテンドしてくれた社員が言う。この社員もまたウーブンのビジョンに引かれて転職してきたという。トヨタからの異動や転職組に加え、大学院を出た研究者、協力企業の出向者もいる。そして章男の長男、SVP(上席副社長)の豊田大輔(p30にインタビュー記事)もまた30代だ。若いチームが未来を切り開いていかなければならない。
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ウーブン・プラネットは、自動運転のソフトウェアを研究開発してきたトヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント(TRI-AD)の流れをくむウーブン・コアと、スマートシティの建設に関連して自動車以外にもあらゆる領域を手がけるウーブン・アルファというふたつの事業会社をもつ。さらに投資会社の「ウーブン・キャピタル」がある。カフナーが言う。

「起業家コミュニティとつながるための会社です。イノベーションの最先端にいるためには、彼らの力を借りることが重要。『障子を開けてみよ、外は広いぞ』とは豊田佐吉の教えですが、よいアイデアがすべて社内から生まれるわけではありません。投資先には投資するだけでなく、パートナーになることも、M&Aをすることもできる。結果として、開発時間の節約にもなります」

では、現段階で具体的にウーブン・プラネットが何をやっているのか。
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高齢者も住人に迎えるウーブン・シティ。情報だけでなく、必要な物資が半自動で届く仕組みが考案されている。デジタルデータや模型(上)で検討中なのは、地下に張り巡らされる物流専用道。ここを移動した荷物が各住戸に配送される。ロボットの動作検証と住宅の設計を並行して行うのも特徴だ(下)。

オフィスには、ウーブン・シティのフェーズ1を検討する無数の模型があった。ホワイトボードには地上の建物や道路とともに、地下の図面が描かれていた。都市の下に張り巡らす「マターネット」と称する物流専用道、水素発電施設や雨水ろ過システムの配置図が描かれ、何枚もの付箋でコメントが付されている。MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)を提供するコンセプト車両の模型も何台かあった。街は「クルマだけが通る道」「人だけが通る道」「パーソナルモビリティと人の両方が通る道」を軸に、カーボンニュートラルの暮らし、人の集い、バリアフリー、渋滞緩和などさまざまな実験が行われる。

これからの自動車開発はソフトウェアが牽引すると言われ、コネクテッド(Connected)、自動化(Autonomous)、シェアリング(Sharing)、電動化(Electrification)のトレンドから、CASE革命と呼ばれる。自動車という従来のハードウェアを高付加価値化し、より人の安全や幸せに寄与できるのがソフトウェアの部分だ。ソフトウェアの研究開発は各自動車会社の取り組みがまちまちであり、それをトップメーカーのトヨタが自らを変革することで率先しようというものだ。

「この仕事はとてつもない価値を生み出せます。ウーブン・シティのミッションの核にあるのは、いかに人々の生活をサポートするためにテクノロジーを活用できるかです。だから、私はワクワクするのです」

ソフトウェア・ファーストの思想で根幹をなす「アジャイル開発」(研究開発とテストを短期間で繰り返し小刻みにバージョンを上げる手法)には、ハードウェアにおけるトヨタの思想が源流にあるとも言える。TPSというトヨタ創業期からのDNAが、「トヨタウェイ」として海外に広まったからだ。また、TPSのひとつに「誰かの仕事を楽にする」という考えから生まれた「カイゼン」がある。人間にしかできない創意工夫と暗黙知だ。カイゼンの歴史をもつトヨタが、カフナーとともにソフトウェアに注力する意味は、実は大きい。GAFAなどソフトウェアスタートの会社にはその実績がないためだ。
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文=神吉弘邦 編集=Forbes JAPAN編集部 写真=ヤン・ブース

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