キャリア・教育

2022.05.14 11:00

なぜ中学受験するの? 「面倒見がいい学校」って何?


どんな結果でも「この子はこの子」


おおた
 『翼の翼』にも受験にのめり込む父親の姿が描かれていました。さすがだと思いました。こうくるか、と。
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朝比奈 実際、お父さんが熱心にのめり込んでいるケースも多いんです。

おおた 円佳と真治もそうですが、夫婦は2人でバランスをとります。父親がこういう役割をすれば母親はこういう役割というように。これは夫婦だけではなく、子どもも含めた家族は常にそれぞれが何らかの役割をもっています。『翼の翼』では、母親である円佳の役割と父親である真治の役割が少しずつずれていく様子が描かれていて、お父さん的失敗とお母さん的失敗の両方が見事に表現されていました。そこも面白かったですね。
 僕は中学受験で試されているのは、子どもではなく親だということに気づいてほしいと思っています。『翼の翼』には円佳が翼の行為に激怒するシーンもありましたが、表面的に悪いことをしているから「あなたは悪い子」ではなくて、そこから子どもが何を経験して何を学びとる可能性があるのか。それをサポートする親であってほしい。

朝比奈 そう思います。
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おおた 中学受験では「ほろ苦さすら宝物」です。第一志望に合格したとしてもほろ苦さが残るのが面白いところ。いずれにせよ、あれでよかったと思える日が絶対に来ます。

朝比奈 私もようやくそう感じるようになっています。子どもが大学受験に向けて一歩踏み出そうとしている姿を見ていると、中学受験から学んでくれた部分もあったのかなと。

おおた そうです。親の失敗からも子どもは学びます。親は、子どもがこれだけ頑張っているんだから報われてほしい、という気持ちと、これだけ頑張れるようになったんだから結果はどうでもいいや、というアンビバレントな気持ちをもつものです。

朝比奈 どこに入ってもいいし、どういう結果になってもこの子はこの子なんだと思えれば、それがゴールですね。

おおた そこにいたれば大成功です。親が謙虚に学べば、いつかこの瞬間がくるんです。『翼の翼』の冒頭で、同じ小学校に通うお子さんたちの受験結果を噂しているお母さんたちが登場しました。最後のほうで、円佳はその時のことを振り返ります。あのシーンもすごくよかった。そう、この感覚を得てほしいんだ、と思いました。

朝比奈 そう読んでいただいてうれしいです。あのシーンは、私自身の実感がこもっています。そう考えると、うちもハッピーエンドだったのかもしれません。いい学びができるいい学校に入学しました。当時を思い出して私のことを感情的に責めたりするのではなく、自分も悪かったけど、ママも悪かったよね、と冷静に言えるのも、学校でいい先生、いい友人に恵まれたからです。

おおた 中学受験で人生が決まるわけではありません。『なぜ中学受験するのか?』と『翼の翼』をセットで読んでもらえば、まだ中学受験を体験する前の人や渦中にいる人にもあの感覚をわかってもらえるような気がします。2冊をセット売りしたいですね。

朝比奈 ぜひお願いします。




なぜ中学受験するのか?』(おおたとしまさ著、光文社刊)


翼の翼』(朝比奈あすか著、光文社刊)

司会・構成/今泉愛子

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