ロシアが「暗号通貨で制裁回避」の可能性、専門家が警告

ロシアのプーチン大統領(Getty Images)

各国の政府がウクライナに侵攻したロシアへの制裁措置を発動する中、専門家は、ロシアが制裁を逃れるために暗号通貨を利用すると警告している。

暗号通貨のマネーロンダリング対策ソリューションを提供するエリプティック(Elliptic)社のデビッド・カーライルは28日、ロシアが制裁の影響を軽減するために暗号通貨を使用するための努力をすることは間違いないと警告した。

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米国や欧州、アジアの暗号通貨取引所はロシアとのほぼすべての取引を停止する可能性が高いが、カーライルによると、ロシアに拠点を置く取引所は今もなお違法行為に加担しており、SUEXやChatexなどのサービスは昨年、ロシアの犯罪者のために3億5000万ドル(約400億円)以上の取引を行ったとして、米国の制裁対象に加えられていた。

カーライルによると、エネルギーが豊富なロシアにとって「最も魅力的な選択肢」は、広大なシベリア地方ですでに行われている暗号通貨のマイニングから、現金に換えたり輸入品の支払いに使ったりできる資産を生み出すことだという。また、イランも制裁回避のためにマイニングによる収益を利用したと伝えられている。

米国の財務省はフォーブスのコメント要請にすぐには応じなかったが、ある当局者は27日のポリティコに対し、ロシア政府が必要とする金額は、マイニングで賄える額をはるかに上回るため、ロシアの試みはさほど気にするべきものではないと述べた。

カーライルは、1.4兆ドルの銀行部門を持つロシアが、制裁の影響を完全に回避するために「暗号通貨だけに頼ることはできない」と28日に述べ、イランや北朝鮮といった大量の暗号通貨を持つ国も、それぞれ10億ドル程度を保有しているに過ぎないだろうと指摘した。しかし、企業やオリガルヒと呼ばれる新興財閥には有用な手段かもしれないと述べている。

米財務省は以前からそのリスクについて警告し、昨年10月には、暗号通貨の不正利用を放置すれば、「米国の制裁の効果を損なう可能性がある」と警告していた。

暗号通貨の大半は、パブリックなブロックチェーン上に取引の履歴を保存するため、不正な取引のトラッキングが可能で、それが大規模な制裁回避のための動きの障害になる。

ブロックチェーン分析会社チェイナリシス(Chainalysis)のポリシー責任者のCaroline Malcolmは、25日のコインデスクの記事に、「過去の制裁では、特定のウォレットのアドレスが制裁対象に指定された事例がある」とコメントし、同社は問題のある取引をすぐに確認するためのアラートを設置できると述べた。しかし、モネロのように、匿名性を高めるように設計された暗号通貨も存在する。

編集=上田裕資

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