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2022.05.04 11:00

その「チン」、危ない! 私たちはそれを毎日0.5mg食べている

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発泡材、合成繊維に含まれる「難燃剤」も──


出生前の甲状腺ホルモンに、ひいては脳の発達や機能に影響を及ぼすという間違いない証拠があるもう一種類の化学物質は、おおまかに難燃剤と呼ばれるグループである。難燃剤は、発泡材の入った家具、合成繊維、敷物、床板に含まれている。このなかで最も懸念されている化学物質は、主に炭素と臭素からなるもので、とくにポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)だ。
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難燃剤についての研究によれば、あなたは家にあるすべての家具を急いで処分する必要はない。ありがたいことに、いくつかの簡単な手だてで、今すぐ家庭でそうした化学物質への曝露を減らせる。

・発泡材がむき出しになった古い家具は、取り替えるか、布のカバーをかける。

・元来燃えにくい、天然繊維(ウールなど)でできている製品を買う。
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・窓を開けよう!外の空気は難燃剤の化学物質の濃度が低く、毎日何分か換気をすれば、ほかの残留化学物質も取り除ける。

・頻繁にHEPAフィルター(高性能微粒子フィルター)付きの掃除機をかけ、モップで水ぶきをして、家電やじゅうたん、家の内外の備品からの汚染物質が混じった埃がたまらないようにする。

・子どもに難燃剤の入ったものをさわったり口に入れたりさせない。

・十分なヨウ素の入った健康的な食事をとるようにする。2007年に世界保健機関(WHO)は、世界で20億人が十分なヨウ素を摂取していないと報告した。ヨウ素は甲状腺の機能にとって欠かせない。海藻にはそれがとりわけよく含まれている。魚介類や乳製品、クランベリーやイチゴにも多い。


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歯の詰め物にも──


ところで、ここに示した手だての背後にある証拠について、いくつか注意をしておかなければならない。予防のためにおこなう介入措置は、必ずしも期待どおりの結果をもたらさない。

シアトルの小児科医で研究者でもあるシーラ・サティアナラヤナが、複数の家族に対し、食事を変えてフタル酸エステルへの曝露を減らすという介入をおこなったところ、おかしな結果がもたらされた。介入群のほうがフタル酸エステルのレベルははるかに高かったのだ!

そこで被験者の食事の成分をくまなく調べるという大変な作業をおこなったところ、被験者に提供されたコリアンダーがプラスチックの粒子でうっかり汚染してしまうやり方ですりつぶされていて、しっかり包装された食品を食べたときに予想されるようなフタル酸エステルのレベルの急増をもたらしたことがわかった。

私たちは、実験室の状況を実生活に再現し、あらゆる曝露の要因をコントロールできるものと考えている。それで多くはコントロールできるが、このような結果は、もっと全体的な変化の必要性を証明している。

「否定的な」結果だと誤解されたもうひとつの例として、エクセター大学のタマラ・ギャロウェイらがおこなった市民科学研究【訳注/一般市民が参加・協力する科学研究】もある。彼らは学生たちと協力し、人々がBPAの混入を評価し、みずから曝露を抑えることができるように、採点の尺度を考案した。

だが曝露量はもともと低く、研究者たちはBPSやBPFのようなビスフェノール代替物を測定していなかった。尿中のBPAレベルは、介入前と比べて介入中に有意な差を示さなかった。研究の計画が悪かったのか?そうではない。ビスフェノール類は、食品だけでなく、感熱紙のレシートやポリカーボネート樹脂、歯の詰め物にも広く行きわたっているのだ。
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