今回は『沈黙の春』の現代版ともいえる注目の書、レオナルド・トラサンデ『病み、肥え、貧す』から、読みどころをピックアップして紹介する。
プラスチックを電子レンジで加熱してはいけない
フタル酸エステルは、とても多様なグループであり、次の章で肥満や代謝、生殖への影響をもたらす可能性がある。だが曝露の明確な痕跡を残さないので、成長途中の幼い子の脳にどんな影響を及ぼすのか推定できない。
フタル酸エステルへの曝露を減らす簡単な手だては、生鮮食品を食べることだ。この点をはっきりさせた研究では、通常の食事から、缶詰食品を使わず、プラスチックにほとんど触れないようにして用意した「特別な」食事に変えた五つの家族について、追跡調査をおこなった。すると、フタル酸エステル──とりわけフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)──の代謝産物のレベルが53〜56%低下した。被験者が通常の食事に戻すと、そのレベルはすぐにまた上昇した。
ガラス容器を使えば心配はまったくなくなるが、それが現実的でない場合もある。多くの学校は、保安上・安全上の理由でガラス容器の使用を許していない。ステンレス製を使うことも考えよう。どうしてもプラスチック製の容器を使わざるをえない場合は、正しく使うことだ。
・プラスチック製容器が使い捨てのものなら、再利用してはいけない。再利用すると、EDCのリスクに加え、細菌で汚染される可能性も増す。
・プラスチック製容器の底などに表示されているリサイクル用マークのナンバーを見てほしい。米国では3ならフタル酸エステルが使われているので、液体や食べ物が汚染される可能性が増す【訳注/日本では材質表示は推奨のみで必ずあるとは限らないが、プラマークの近くにPVCとあるのが米国の3に相当する】。
・プラスチックを電子レンジで加熱してはいけない。顕微鏡レベルでプラスチックを溶かし、食べ物に入れることになる。電子レンジで加熱しても安全なプラスチックなどといったものはない。
・プラスチックを食器洗い機で洗ってもいけない。刺激の弱い石けんと水で手洗いしよう。刺激の強い洗剤はプラスチックを腐食し、液体や食べ物へ多く吸収させてしまう。
・プラスチック製の食品容器が腐食していたら、もう捨てるときだ。腐食していると、しみ出す可能性が高くなる。
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多くの化粧品や香水に見つかる低分子量のフタル酸エステルに、私たちの体内の性ステロイドを攪乱する心配がないわけではない。良いニュースは、いくつもの企業が、「安全な化粧品キャンペーン」などの組織と密接に協力し、自社のローションやクリームからフタル酸エステルを排除すると約束したことである。
また環境ワーキング・グループは、「スキン・ディープ(Skin Deep)」という総合的でとても利用しやすいデータベースを運営し、成分についてわかっている事実をまとめ、リスクがとりわけ少ない化粧品を紹介している。
あなたは成分表示を見て、「香料」やフタル酸エステルが含まれている製品を避けることもできる。マニキュアやヘアスプレーやデオドラントには、フタル酸エステルが含まれていることが多い。若い女子を対象とした最近の研究では、フタル酸エステル、パラベン、トリクロサン、ベンゾフェノンがないと表示されている日用品を選ぶと、内分泌攪乱物質の可能性がある物質への曝露を27〜44%減らせることがわかっている。