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2022.03.01 16:30

「900億円ファンド」組成の中村幸一郎、競争激化のシリコンバレーでどう戦うか

露原直人

Sozo Ventures 中村幸一郎(提供=Sozo Ventures)

米フォーブスの最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング「Midas List 2021」で72位となり、日本人で初めて選出された投資家として知られる、Sozo Ventures(Sozo)の中村幸一郎。

フィル・ウィックハムとともに中村が創業した同社は2022年1月、およそ8億ドル(約920億円)を目標値とした3号ファンドを立ち上げた。

シリコンバレー拠点のベンチャーキャピタル(VC)として知られる同社は12年1号ファンド約100億円、16年に約200億円の2号ファンドを組成。出資先の暗号資産交換所の米コインベース、データ分析大手の米パランティア・テクノロジーズの上場が評価され、ランキング入りした形だ。


同社の特徴は、投資先であるトップティアのスタートアップである、米ツイッター、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ、前述のコインベースと、彼らのファンド出資者(LP)である日本の大企業を連携させ、日本進出を手がけてきた点であり、そうした実績が評価されてきた。

同社のLPには、三菱UFJ銀行、SOMPOホールディングス、ヤマトホールディングスらが名を連ねている。

そんなSozo Venturesが一気にファンド規模拡大した理由は──。中村が感じる投資環境や勝ち筋の変化を聞いた。


競争は激化


── なぜ、ファンドサイズを4倍以上も大きくしたのか。

主な要因はシリコンバレーの投資環境の競争激化で、それに対応するためです。

我々が最初にファンド組成した時期である2011〜12年頃のシリコンバレーでは、トップティアのVCファンドが投資する有力スタートアップであっても、3〜4社は追加投資が可能だった。しかし現在は、1〜2社。

15年を過ぎたあたりから競争環境が厳しくなり、投資案件の「寡占」が進んでいる。新規の投資家を一切呼ばないラウンドもあります。

投資家も、米タイガー・グローバル・マネジメントのようなヘッジファンドや、ソフトバンク・ビジョン・ファンドをはじめとした超巨大投資家もプレIPOステージで投資を始めている。彼らが投資するラウンドの「前」に食い込まなければいけない。

そのためには、新規投資家の1社として選ばれるだけの付加価値と、必要なファンディングニーズを充足できるチケットサイズ(一回の投資額)が不可欠になってきています。

これまでのチケットサイズは500万ドル(約5.8億円)〜1000万ドル(約11.5億円)。それがいまでは2000万ドル(約23億円)超えが必要とされるようになってきました。

こうした状況に対応するため、2号ファンドの運用途中から、より高い付加価値を提供できるようなチーム体制の整備やシステム強化を数年がかりで進め、チケットサイズも大幅に拡大できるようになってきました。
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文=露原直人

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