現在の体制を強化するために使われる“皇帝”のようなプーチンの姿は、ますます不自然に感じられるようになっている。ゼレンスキー大統領が明らかな虚勢を張ってみせる姿とは、まったく対照的だ。
ロシア軍に追われているゼレンスキーは、ヘルメットをかぶり、防弾チョッキを着て、キエフを守る兵士らとともに行動している。だが、プーチンはウクライナへの侵攻を開始して以降、攻撃に投入したおよそ20万人の兵士からなる部隊の前に、一度も姿を見せていない。
プーチンは過去およそ30年間、自らの世間的なイメージを積極的に操り、ロシアにおける新たな理想像を築き上げ、自らをそれに適合させることに力を注いできた。2007年にはカメラマンらを前に、上半身裸でスナイパーライフルを持って歩く姿を披露。
また、ホッケーをしたり、柔道の練習をしたりする姿、小型潜水艦を操縦する姿、子犬たちとはしゃぎ回る姿なども撮影させてきた。第二次チェチェン紛争のときには、ヘルメットをかぶり、自ら爆撃機を操縦してチェチェンに乗り込んだ。かつてのプーチンは、戦時の指導者に国民が期待するすべてのことを、実際にやってみせていたのだ。
だが、現在の過剰に仕立て上げられたプーチンのイメージと、肝の据わった勇敢な行動を取るゼレンスキーの姿を並べてみれば、そこに軋み合うような違いがあることは明らかだ。リアルな存在感のあるゼレンスキーに対し、プーチンは自ら作った豪奢な“ポチョムキン村”に閉じ込められた、残念なフェイクのようだ。
新型コロナウイルスのパンデミックが発生して以来、プーチンは“大衆の味方”のイメージに磨きをかけるための努力を、ほぼ放棄している。