フィンランドと文化圏を共にするエストニアでは、古くは紀元前からサウナ文化が存在したとされ、文献上では13世紀から確認することができる。今日でも、各家庭に当たり前のようにプライベートサウナがあるように、サウナはエストニア人にとっての日常だ。
2014年には、エストニア南部・ヴォル地方の「スモークサウナ」がユネスコ無形文化遺産に登録されるなど、エストニアのサウナシーンはますます盛り上がりを見せている。
本連載では、北欧、西欧、ロシアの影響を受けながら、独特のサウナカルチャーを形成している「知られざるサウナ大国・エストニア」について紹介したいと思う。
サウナが日常に溶け込む国
エストニア人にとって、サウナは日常だ。温浴施設はもちろんのこと、ホテルやジム、そしてオフィスに設置されていることも珍しくない。各家庭への普及率も高く、都市部では電気ストーブを用いた屋内型の家庭用サウナが、地方部では薪ストーブを用いた屋外型のサウナがよく見られる。
古民家に併設された薪ストーブ式のサウナ(筆者撮影)
残念ながらエストニアではサウナの数を統計的に取りまとめたデータはないのだが、隣国フィンランドでは、人口約530万人に対して330万のサウナがあると言われており、国民1.6人あたりに1つのサウナがある計算になる(BBC調べ)。
両国の所得格差や、歴史的な違いを鑑みても、エストニアには少なく見積もっても数十万のサウナがあることが想定される。
なお、日本においては、サウナ愛好家約1573万人(日本サウナ総研調べ)に対し、サウナ施設数は約1万(サウナイキタイ掲載数)とまだまだ少なく、家庭用サウナをあわせた合計サウナ数を2万と仮定しても、サウナ愛好家786人に対してサウナが1つという計算だ。
最近日本ではサウナ施設の新規オープンが相次いでいるが、フィンランドやエストニアとは比にならず、サウナ施設の混雑にも納得がいく。