ビジネス

2022.03.09

元コンサルCEOは、大学発スタートアップの「あるある」をどう乗り越えたのか

創業者でCSOの細川正人とCEOの佐藤公彦(撮影=曽川拓哉)


もちろん、創業者である細川の思いは尊重します。一方で、CEOを任せられた以上は、舵取りの権利と責任は自分にあると割り切り、研究の観点だけでなく事業の観点からも経営を考え、短期的なマネタイズと中長期的な躍進のためのポートフォリオを組む必要があります。

実は、CEO就任時、研究開発と事業開発が分断されているという課題もありました。

細川の中でも切り分けて考えていたようです。しかし、企業の目標を掲げ、それを実現するために研究開発と事業開発が連携してやるべきことを定めることがCEOの責務でもあります。

細川:私も自分の領分をわきまえて、任せるべきところは任せるようにしています。自分のやるべきことにフォーカスして、お互いに尊重し合える関係が大事だと思います。

ゲノム解析
会議室に掲げられたビットバイオームのミッション

── 資金調達はどのように進めていった?


細川:設立時には、研究開発法人の助成金制度を利用しながら、ベンチャーキャピタル(VC)とつながりを作っていきました。

ピッチもネットで事例を学ぶなど、自己流で勉強しながら、2019年1月にはUTECからシリーズAとして3.5億円の資金調達を完了しました。

スライド1000枚の経験を生かしたシリーズB


佐藤:ただ、2020年8月のシリーズBは非常に苦労しました。COOとして入った同年2月は、まさにコロナ発生直後で、VCも出資にかなり慎重でした。同時に事業開発も進めなければならなかったため、ダブルで苦しかったことを覚えています。

人員強化や設備充実、技術開発の成果をまとめ、なんとか7億円の資金調達を実施できました。ただ、過去の経験も生きたと思います。コンサル時代で数えきれないほどピッチをやってきましたし、作ってきたスライドは1000枚を超えます。7年間コンサルをやってきた強みですね。

そこを乗り越えてやっと資金の面でも余裕ができ、事業に向き合う姿勢の見直しやビットバイオームの目指すべきところを考えました。

ビットバイオームの意思決定は、私が事業と経営の面から、細川が技術と科学の面から行なっています。この分担はうまくいっていると思います。2人でタッグを組みながら、社員とともに我々が掲げた目標を夢物語ではなく実現させるために進んでいきたいと思います。

文=島田祥輔 取材・編集=露原直人 撮影=曽川拓哉

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