ロシア軍がウクライナへの攻撃を続け、市民が大挙して避難する中、ウクライナの歴史と重要な遺物が危機に瀕しているが、重要なニュース記事や動画、ソーシャルメディアの投稿などのコンテンツも消し去られる危険がある。
アルウィーブは、こうしたコンテンツを永久に保存するための、「permaweb(パーマウェブ)」と呼ばれるノアの方舟のようなプラットフォームを作ろうとしている。
実質的に無制限のデータを安価に永久保存するpermawebは、ここ数週間でウクライナ紛争に関する650万件以上の情報を収集し、データ容量は50テラバイトを超えたという。
アルウィーブのネットワーク参加者は、ノードを提供する対価として、ARと呼ばれるトークンを付与される。ARの価格は現在28ドルで、時価総額は10億ドルに達している。参加者のノードは現在約1000に達しており、米国やドイツ、そして興味深いことに中国からの参加者も居る。
Over 1 million documents from the Ukraine/Russia crisis have been stored on-chain by the Arweave community over the last week.
— Sam Williams (@samecwilliams) February 19, 2022
Thank you for helping us build an incorruptible archive of history, all. https://t.co/8w1XvxP8NK pic.twitter.com/OG9ypROYxm
ウィリアムズは、既存の中央集権的なデータストレージの欠点を補うためにこのプラットフォームを作ったと述べている。
「企業は永久に続くストレージを作ることはできない。なぜなら、企業はビジネスモデルを変えたり、エラーを起こす可能性があるからだ。私たちのプラットフォームは検閲に強く、非常に低コストで誰もがアーカイブに貢献でき、個人が重要だと思う記事を歴史に残すことができる」
香港の独立系メディアも支援
アルウィーブは、今回のウクライナ危機の以前からその威力を発揮していた。その一例に挙げられるのが、2018年11月に、ロシア海軍がクリミア半島近海でウクライナの船を拿捕し、24人を拘束した際のエピソードだ。
この事件を最初に報じたロシア系メディアの「スプートニク」は当初、「ロシア側が最初にウクライナの船に発砲した」というウクライナ側の主張を記事化したが、その記事は公開からわずか14分後に削除された。しかし、アルウィーブのメンバーはそれをアーカイブに保存していた。
スプートニクはその後、「事件の責任は領海侵犯を犯したウクライナ側にある」というロシア寄りの記事を掲載したが、アルウィーブは事実を保存できたのだ。
アルウィーブはまた、2019年4月に香港で起きた民主化デモの際にも注目を集め、中国政府の圧力で廃刊に追い込まれた独立系メディア「アップルデイリー(リンゴ日報)」の1万2000記事のアーカイブを作成した。さらに、カナダの国防省がニュースフィードから削除して隠蔽しようとした、性的暴行事件に関わるニュースもアルウィーブに記録されている。
もちろん、アルウィーブの取り組みには反発もあり、参加者のパソコンが中国政府に押収されたこともある。さらに、ウィリアムズと同社のCTOは、「政府の支援を受けたハッカーが彼らのアカウントに侵入しようとした」という警告を、グーグルから受け取っている。
ウィリアムズと彼のチームは、当面のところ、可能な限り多くの情報を保存することに注力しているが、今後はさらに困難な状況に直面する可能性がある。