元同僚の証言
ハッキング事件の翌年の2017年初頭、ホーニッシュが設立したTenXは、イーサリアムの創始者であるブテリンがゼネラルパートナーを務めるFenbushi Capitalを含む投資家から100万ドルのシード資金を調達し、8000万ドルのICOを実施した。
しかし、2018年初めにTenXのカード発行会社がVisaネットワークから追放されたことで、TenXの前途に暗雲が立ち込めた。彼らは別のカード発行会社を見つけたが、その会社も2020年10月にシンガポールの当局から業務停止を指示されたため、TenXはサービス終了を発表した。
その間、会社の表向きの顔を務めていたホスプは、2019年1月にホーニッシュらによって解雇されていた。ホスプは、彼が2017年後半のバブルの頂点でビットコインを売り、2000万ドルの利益を得たことへの嫉妬から、ホーニッシュが自分を追い出したのだと考えていたという。
「彼はとても貧しい家庭の出身で、投資の経験もなく、2010年頃から暗号通貨に関わっていたが、2016年夏に一緒にラスベガスに行った時も金に困っていた。彼はいつも、もっと金が欲しいと話していた」
ホスプはまた、ホーニッシュがシングルマザーとして自分や兄弟を育ててくれた母親に仕送りをしなければならないと言っていたと述べている。
筆者から、The Daoのハッキング犯がホーニッシュだという話を聞いたホスプは、「鳥肌が立った」と言って、さらなるディテールを話し始めた。ホーニッシュが夢中になっていたプライバシーコインのGrinについて尋ねると彼は、「そうだ! 確かに彼はあの馬鹿げたコインに夢中になっていた」と話した。
ホーニッシュはまた、さらに別のプライバシーコインのモネロにも強い関心を抱いていたという。ホスプは、ホーニッシュが普段使っていたメールアドレスの末尾が、確かに「@toby.ai」だったことを筆者の取材に認めた。
「当時は、なぜだか分からなかったが、(事件が起きた時に)彼は、不思議なほど何が起こっているのかをよく理解していた。ハッキング事件について尋ねると、ホーニッシュは、私がインターネットで調べた事以上の詳細を把握していた」とホスプは話した。