ウクライナ当局によると、ロシア軍は侵攻の開始から数時間後には、原子力発電所を占拠した。これを受けて、現地の政府関係者からは原発付近で戦闘が起こることや、ロシアによるコントロールを危険視する声が相次いでいる。ウクライナの大統領顧問は「チェルノブイリ原発が安全だとは言い難い」「ロシアによる原発の掌握は、欧州における最も深刻な脅威の一つだ」と述べた。
ウクライナのゼレンスキー大統領も、24日のツイートで同様の懸念を示していた。
ワシントンポストによると、ウクライナ内務省顧問のアントン・ゲラシチェンコは、チェルノブイリ地域に「安全ではない核放射性廃棄物」の貯蔵施設があると述べている。
ウクライナ外務省は、ロシア軍によるチェルノブイリの占領が「新たな生態学的大惨事」につながり、1986年発生した原発事故が再び起こる可能性があるとツイートした。
「ロシアはチェルノブイリを占領することで、NATOに対し軍事行動を踏みとどまるよう、メッセージを送っている」と、ロシア側の関係者はロイターの取材に述べている。
原発事故の発生当時にソ連の大統領だったミハエル・ゴルバチョフは、この事故こそが「ソ連の崩壊の真の原因だったと考えられる」と述べており、ロシアにとってチェルノブイリ原子力発電所は重要な意味を持っている。
1986年4月26日、ウクライナのプリピャチ市にあるチェルノブイリ原発で、定期テストの失敗により原子炉が爆発を起こした。この爆発で少なくとも28人が死亡し、世界最悪の原発事故となった。国際原子力機関(IAEA)や国連、世界保健機関(WHO)によると、約4000人が高線量の放射線を浴びた後にガンで死亡し、さらに5000人が放射線被曝で死亡したとされている。
この事故では、ウクライナから約2400キロ離れたイギリスまで放射能が飛来した。USA トゥデイは2016年4月の記事で、30年前に発生した事故の影響で、約45万人の子供を含む200万人以上が、医学的観察や治療、または支援を受け続けていることを、ウクライナ保健省から入手したデータに基づき報じていた。