ロシアがウクライナ東部ドンバス地域のドネスク、ルガンスク両州で親ロシア分離主義者が支配している地域の独立を承認。それに対して日本や欧米各国が対ロ経済制裁で応じることを決めたのをあざ笑うかのように、ロシア軍はウクライナの各都市を攻撃し、爆発が相次いだ。
中東産原油の代替需要が膨らむ
ロシアによるウクライナ侵攻が現実になったことをきっかけに、金融市場は大きく動いた。
2月24日の日本の株式相場は売り先行の展開となり、日経平均株価は2020年11月以来の2万6000円割れとなった。終値は22日に比べて478円安の2万5970円。外国為替市場ではユーロが下落。地政学リスクの高まりを警戒した売りがかさんだとみられる。
一方、商品(コモディティ)相場はウクライナ情勢の悪化を受けて、供給の先細りに対する懸念が台頭。欧州を中心に取引されている原油の北海ブレント先物は1バレル=100ドルを上回った。100ドル超えは7年5カ月ぶりのことだ。
原油は、ロシアが米国、サウジアラビアに次ぐ世界第3の生産国。生産量全体に占める割合は約11%に達する。ウクライナ侵攻を強く非難する国々のロシアに対する経済制裁には覚悟が必要。ロシア産原油の購入をストップすれば、中東産原油などの代替需要が膨らみ、価格のさらなる上昇を招きかねないからだ。
経済制裁で外貨獲得のための選択肢を狭められるロシアが、今後、原油の価格を押し上げようとの意向を強めることも考えられる。「現在の情勢をあえて鎮静化させることはなさそう」と楽天証券経済研究所の吉田哲コモディティアナリストは分析する。
ガス価格も一段高が視野に入る。欧州は天然ガス輸入の約4割をロシアに依存。国別ではドイツが6割、チェコはほぼ100%をロシアからの輸入で賄う。ドイツはロシアに対する制裁措置として欧州連合(EU)に先駆け、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノード・ストリーム2」の承認手続き停止を決めた。だが、経済活動が徐々に正常化へ向かうなかで、ガス需要拡大に対応できるのかは不安が残る。