ウクライナ危機、米国の保守派にはロシア擁護論も

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ウクライナ危機をめぐって米国の保守派からは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の行動を称賛したり、ロシアの置かれている立場に理解を示したりする声も出ている。

ドナルド・トランプ前大統領は22日、保守系ラジオ番組「ザ・クレイ・トラヴィス&バック・セクストン・ショー」に出演し、プーチンがウクライナ東部の分離派支配地域を国家承認したことを「天才的」と称賛した。プーチンのことを「じつに抜け目のない男だ」とも評した。

トランプは同日、これに先だって声明を出し、ジョー・バイデン大統領の対応は「弱腰」だと批判。一方で、自身がロシアに対してどのような制裁が適当と考えているかには言及しなかった。トランプはこの日まで1カ月近く、緊迫するウクライナ情勢について沈黙を保っていた。

保守派のコメンテーター、キャンディス・オーウェンズも同日のツイートで米国の対応をやり玉に挙げ、米国人はロシアとウクライナで「実際に」起きていることを知るために、プーチンの演説の原稿を読んでみてほしいと呼びかけた。ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟する可能性がロシアの脅威になっているとの認識も示し、「責任はわたしたちにある」とも主張した。

FOXニュースのキャスター、タッカー・カールソンは22日夜の番組で、視聴者に「自分がなぜプーチンを憎むのか」自問してみるよう促した。戦争になった場合に米国人がロシア側につけば、それがなぜ「裏切り」になるのだろうかと疑問を呈した。

2020年に民主党の大統領指名候補争いに出馬して以降、右寄りになったトゥルシー・ギャバード下院議員は21日、ショーン・ハニティーが司会を務めるFOXニュースの番組で、プーチンはウクライナ問題には「ロシアの安全保障がかかっているという認識」をかねて明らかにしていると発言。ロシアの国境にNATOの脅威が迫っているのであればプーチンの対応は自然な反応だと理解を示した。

共和党の過激な右派であるジョシュ・ホーリー上院議員も、米国の対応を繰り返し批判している。今月、アントニー・ブリンケン国務長官に宛てた書簡のなかでも、米国がウクライナのNATO加盟を支持していることに異議を唱えた。

マイク・ポンペオ前国務長官もこのところ米国の対応を批判しており、プーチンについては「有能な政治家」で「たいへん尊敬している」と述べたこともある。ただ、21日のツイートではプーチンは「侵略者」だとも認めた。

民主党のトム・マリノフスキ下院議員によると、自身の事務所には先月末、ウクライナ危機で「米国がロシア側を支持していないことにいらだった」らしい、カールソンの番組の視聴者たちから電話が殺到したという。

編集=江戸伸禎

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