プロジェクト名は、「ソノ アイダ #新有楽町」。この言葉から、何が行われているかなんとなく想像がつくだろうか。
「ソノ アイダ」とは、藤元が2015年から展開してきたアートプロジェクトだ。空き物件や貸し物件など、時間的にも空間的にも利用されていない“都市の隙間”を見出し、「その間」でアート展示やイベント、ポップアップショップ、スナックなどを開催してきた。
今回その舞台となるのが、2023年を目処に閉館が決まっている「新有楽町ビル」の一角だ。路面に位置する一等地を「アーティストスタジオ」とし、約1カ月半単位で、アーティストが作品を制作するプロセスを一般公開しながら展示・販売も行っている。
2021年12月から行われた第1期は、巨大な木彫刻を生み出す森 靖(もり・おさむ)と藤元が参加。現在は、相澤安嗣志、岩村寛人、マイケル・ホーという3名を迎えて第2期を開催中(3月6日まで)。藤元は第2期以降、“企画・管理人”として携わり、その選定によりアーティストが入れ替わりながら、第4期までが予定されている。
3月4,5,6日に行われるの展示会の準備を行う(左から)岩村寛人、マイケル・ホー、相澤安嗣志(写真=藤元 明)
場所と人とお金とモノと
一見、テナントの貸主である三菱地所とアーティストのWin-Win関係に映るが、仕組みはもう少し複雑かつ精巧だ。
まず、空間に関しては、三菱地所が供出した区画をアトムが借り受け、アーティストに無償で提供する。三菱地所は2019年から、大手町・丸の内・有楽町エリアにおいて、アートを街づくりに活かす「アートアーバニズム」構想を掲げており、これはその一貫となる。ビジネスの文脈で「アート思考」と言われて久しいが、アートアーバニズムでは、アーティストの活動自体が街で起こることで、思考そのものに触れられる街づくり目指している。
一方でアーティストは、アトムよりアーティストフィーを得ながら、一等地で制作に取り組める。藤元曰く「都心には作品はあるけれど、アーティストはいない。空間を必要とするアーティストは、賃料の安い郊外で孤独に制作している」のだが、アクセスの良い都心では、アート関係者や通りすがりの一般客にまで、作品制作の様子も含めてコミュニケーションが盛り上がり、逆に刺激を得ることもできる。