月の半分は「売上ゼロ」だった1年目
シトウ:創業時のシンゾーンのコンセプトは?
染谷:僕と妻、息子の3人で話をして考えました。その中で最も大事にしたいのは「デニムに合う上品なカジュアルだよね」、という話になりました。
僕らはデニムが好きなんです。デニムって元はアメリカの作業服ですが、100年以上の歴史がありますよね。そして、世界中の人に愛されています。
だからシンゾーンも、デニムを軸に置いてスタイルを考えていったら、長く続き、世界中で愛されるようなブランドになれるのではないか。そういう風に考えたんです。
シトウ:デニムといえば「カジュアル」なイメージがありますが、ただのカジュアルではないのですね。
染谷:「上品なカジュアル」なんです。例えば、リーバイスのビンテージデニムにTシャツ、バレンシアガのバッグ、リバティープリントのパッチワークのベスト、といったような。素敵な町で、素敵なBGMの中を歩くイメージです。
シトウ:カッコいい!
染谷:ただ、今と比べるとまだカジュアルの注目度はそんなになかったので、4年くらいは売れませんでした。1年目の売上は5000万円ほどで、売上がゼロという日が月の半分ぐらいはありましたね。
2年目は6500万、3年目が7000万ほどの売上でした。そして4年目でやっと1億に乗りました。で、5年目で2億です。ここで軌道に乗り始めたので、少しずつ出店をしていきました。
ブレークスルーのポイントは「人」と「商品」
シトウ:ブレークスルーのポイントは?
染谷:ひとつは「人」ですね。お客さまから憧れられるスタッフ、販売員が増えていったんです。おしゃれでかわいくて、人柄もよくて。徐々にそういう子たちが集まってきた。その子たちの力によるところが大きいです。
シトウ:なるほど。ちょっと気になったのですが、採用する時の基準ってあるのでしょうか? 今みたいに対面で話している際に「この人はいい!」みたいに分かるものですか?
染谷:うーん、今はだいぶ歳になったので、ある程度分かるようになってきたんですが、若いころは自信がなかったですね。
ただ、やっぱり当時だと「服が好き」っていうことがものすごく重要だったので、ひとつはそれですかね。あとは、話をしていて「この子は(才能を)持っている人だな」と思った人を採用していきました。結果的に「おもてなし」ができる、人間力が高い子がたくさん集まってきていたんです。
シトウ:なるほど。
染谷:あとは、扱う商品の変化です。バレンシアガだけでなく、多くのお客さんが手に取れるようなブランドも扱うようにシフトしていきました。同時に、オリジナルも増やしていきました。それが一番買いやすいものですね。
こうしたことがうまく機能し始めて、4年目から上昇気流に乗って、売上も十分採算が取れるようになったって感じです。