自殺が周囲の人に残す3つの大きな疑問

女優のレジーナ・キング(左)と息子のイアン・アレクサンダー・ジュニア(右・今年1月自殺により死去)。(Photo by Kevin Mazur/AMA2019/Getty Images for dcp)

米国では、自殺は10番目に多い死因だ。だが、10~34歳に限ってみると、その順位は2番目となる。米国国立精神衛生研究所は、自殺を公衆衛生上の“大きな懸念事項”に挙げている。

米国の自殺率は、1999年から2018年の間に35%上昇した。2019年には一時的に低下したものの、新型コロナウイルスのパンデミックの発生以降、自殺のリスクファクター(危険因子)であるうつ病や不安障害と診断される人が増加している。

すべての自殺は残された家族や知り合いに、解消されることのない疑問を残す。その主なものは、次の3つといえるだろう。

1. なぜ自殺した?


家族に最も大きな挫折感や混乱、悲痛な思いを抱かせるのは、おそらくこの「なぜ?」だろう。だが、ホームレスのHIV感染者を支援する米国の慈善団体、ハウジング・ワークスで「最高精神医学責任者」を務めるピエール・アーティ医師は、「人を自殺に至らせる強烈な絶望感、精神的苦痛、孤独さ、あるいは自暴自棄になった気持ちを、私たちが完全に理解することはできないだろう」と語る。

また、計画して自殺する人もいる一方、すべての人がそうするわけではないとして、「家族でも担当医でも、予見不可能な、瞬時の決断だった場合もある」と述べている。

2. なぜ気付かなかった?


家族、友人、同僚、そして患者の自殺を防げなかったことに、多くの人は罪悪感と、自責や慙愧(ざんき)の念を抱く。ニューヨーク州で活動する精神科医のキャンディダ・フィンク医師によると、その背景にあるのは、私たちが自殺を「ほかの(死因による)死よりも、防げるはずのものだと考えている」ことだ。

だが、公衆衛生上の課題とされ、対策が講じられている自殺は、実際にはそのようなものではないという。多くの場合、自殺には複雑な要因が絡んでいる。治療の効果が出ていない、深刻な精神疾患が関係していることもある。

3. “裕福なのに”、なぜ?


裕福な人が自殺したとき、私たちの多くは、「すべてを手に入れたのではなかったのか?」と考えてしまう。イェール大学医学大学院のナンス・ロイ准教授(精神科臨床学)は、私たちが持つこの疑問について、「きらびやかさや名声、財産など、その人が持つ一つの面しか見ていないために、そう考えてしまうのだ」と指摘する。
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編集=木内涼子

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