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2022.02.26

ドラえもんの実現を目指す研究者が、「偏差値50」の大学を選んだ理由

開発中のロボットを手にする大澤正彦


──なぜコミュニティなのでしょうか。

コミュニティであれば、「誰が先生で誰が学生」というのが特になく、お互いに「面白いな」と思った人の話を聞いて、つながりたい人とつながれるからです。

現在の参加者は約150人。日大の学生が60人、日大文理の教職員や、パートナー企業の方々が約50人、プロボノという形で大学のコミュニティに参加できる仕組みを使って入っている個人が40人ほどいます。こうしたオープンなコミュニティをつくることで、ゲームチェンジを起こせると考えました。

設立にあたっては、組織論から研究しました。RINGSでは「いかに100人を合理的に動かすか」といった一般的な組織論ではなく、「一人ひとりの夢を叶えるために組織がある」という考え方を採用しています。そうすれば、組織の力を使って全員が価値創出できるようになります。

例えて言うなら、「ウニ型組織」ですね。みんながバラバラな方向を向いていていい。でも、根っこでしっかりつながっていて、誰かが行きたい方向に向かうときにはみんなで協力して向かうような。そして、中には“美味しいもの”が詰まっている。そういう組織を目指しています。

──具体的には、どのような活動をしているのですか。

現在は約20のプロジェクトが動いています。

ひとつは、カーボンニュートラルプロジェクト。学生が立ち上げたプロジェクトですが、豊田市や電気事業連合会、経産省の若手ワーキンググループから派生した一般社団法人ELPIS NEXTのメンバーなども参加しています。資金面はもちろん、各専門内容についてのゼミやディスカッションを行うなどアクティブなかたちで参加協力してくださっているんです。

また、「学べるゲームをつくりたい」という声に対して、「ボードゲームショップで働いているからゲームのつくり方がわかる」「ゲームをプログラミングでつくれる」などと、他の学生が協力する動きもありました。広い視野と知見が合わさり、1人では達成できないことが実現できています。

こうしたRINGSのプロジェクトを見ていると、「ドラえもんっぽいな」と思うんです。『ドラえもん』では、のび太くんが「ジャイアンにいじめられた」などと、ドラえもんに泣きつくところから始まることが多いですよね。のび太くんは、自分では解決できない課題や、ときには解決策の検討すらつかない課題でも、とりあえずドラえもんに話してみることによって前に進むことができます。

RINGSでも、周りの人とつながることによって課題が解決できたり、予想もしなかったような解決策が見つかって「できるかも」と一歩前に踏み出したりすることができるので、共通するところがあるなと思います。
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文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 撮影=小田光二

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