経済・社会

2022.02.28 14:30

硬貨の銀行預け入れが有料に。サービスへの正しい対価を考える


このまま銀行に預けていいのか?


メガバンクや地方銀行に比べてネット銀行は手数料も安く、これからさらにキャッシュレス化が進むのなら、自分のメインバンクをネット銀行に一本化しようかと思うという意見をくださる方も多い。

特に支店などに用がないのであれば、それは合理的な考えであろう。筆者の場合はネット銀行が対応していないサービスを利用することもあるため、メガバンクとネット銀行の両方の口座を持っている。

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Oscar Wong/Getty Images

また、もう一ついただく意見としては、銀行のサービスが硬貨の預け入れだけでなく、ATM利用料、通帳の発行手数料、口座維持手数料など、あらゆるサービスを有料化、または値上げをするのであれば、お金を投資に回そうかと思うというものだ。

しかし、これは少し注意したほうがいい。1000万円までは保護される銀行預金と元本保証されているわけでもない投資を選択肢として並列に考えるべきではないからだ。

ただし、昨今の物価上昇を受けて、現預金の一部を目減りしないように投資に回すという戦略なのであれば、それは合理的であるといえよう。

日本銀行が発表している資金循環統計に基づけば、2021年3月末時点における日本の家計の金融資産は54.3%が現預金のため、このまま物価上昇が長期間続くと予想するのなら、金融資産を預金、株式、債券などどのように配分するかを考えるにはいい時期かもしれない。

最後に注意したいポイントを共有しておこう。企業が無料で提供していたサービスが有料化されると、かなりの顰蹙を買うことがある。確かに消費者からすれば、これまで無料だったのだから有料にされれば損をした気分になるかもしれない。

しかし、企業側に手間やコストが発生しているのであれば、そのサービスに付加価値がある限りは、消費者がそれに対して幾ばくかの手数料を払うのは間違ったことではないだろう。

日本銀行が発表した「金融システムレポート17年10月号」によると、先進国では金融サービスの価格が年2%程度の伸びを示しているのに対し、日本だけは価格がほとんど変化していないと指摘している。確かに海外では口座維持手数料をはじめ、あらゆるサービスが既に有料化されている。

モノやサービスの値段は安いほうがいい。無料なら最高だ。そのような考え方はわからなくもない。しかし、経済は全て繋がっているため、企業がコスト削減を進めて安くモノやサービスを売ろうとすれば、そのぶん人件費や投資が抑えられたり、正社員ではなく非正規雇用を採用したりしようとするはずだ。

そうすると、回りまわって自分の給料が上がらなかったり、雇用状態が不安定になったりする可能性がある。有料化や値上げに対してただ不満を持つのではなく、その裏側にある事情についても一考する習慣を身につけたい。

連載:0歳からの「お金の話」
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文=森永康平

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