特集のコンセプトに共感を示す独立研究者の山口周は、いまこそがスモール・ジャイアンツの価値を存分に発揮できる時代だと語る。その理由とは。
ビジネスは社会問題を解決する営みだといわれているが、現実にはカネにならないことは放置されがちである。下図のように、普遍性が高い問題は多くの人に共感されやすく市場が大きい(「経済合理性の限界」の内側部分)。対して普遍性が低い問題は市場が小さいので解決しようとする人が少ない。特に大企業は成長のために大きな市場を必要とするので、大企業はこの領域に手を付けようとしない。
しかし、切実なニーズであれば人はその解決にお金を払う。例えばイケアは、身体障碍者は健常者用の家具を使いにくいというところに着目した。身体障碍者は全世界人口の約1割いるが、身体の不自由な人が扱いやすい家具はほぼなく、切実な問題(ペイン)だった。
そこで家具と組み合わせて使いやすくするパーツの3Dプリンタ用データのダウンロードサービスを始めたところ、127カ国でダウンロードされ総売り上げは一年で4割も増えた。イケアの出店は20数カ国ほどなので驚異的な数字である。
身体障碍者は1割しかいなくても必ずどの国にもいる。だから市場から求められ=プルされて、市場が大きく広がったのだ。グローバルな視野で、ほったらかしにされてきた問題を見つけて解くことで、実はとてつもない成長を生み出す可能性がある。普遍性が低いというのは思い込みにすぎないのだ。
また、普遍性が低い問題は共感するのが難しく、ここにタックルしようと合意形成するのは大企業ほど不向きだ。規模が小さく、共通の合意をもって進めることができる企業こそ、ニッチな問題を解くのに向いているはずだ。
意味が重要視される時代
小さな組織でも市場を生み出すものとして「ペイン」のほかに、「意味のイノベーション」がある。これは大きな市場をつかんできた「役に立つ」とは対極にある。