酒提供なしの「日本料理店」が、中東・北アフリカNo.1になった理由

「中東・北アフリカベストレストラン50」授賞式にて


滞在中、実際に3 filsを訪れてみると、店の前に行列ができる人気ぶり。

去年からチームに日本人の城間俊シェフが加わり、魚の扱いがガラリと変わり、地元の魚がテーブルに上ることが増えたという。この日は目の前の海で漁師が釣り上げた、地物のカンパチの刺身が登場。臭みもなく、南の魚にありがちな水っぽさや身の緩みもない。

ジャマイカなどの南国にもいた経験のある城間シェフによると、「元々の魚の個体差もあるが、刺身の魚は、釣ってからいかに短時間に、低温で処理ができるかもポイント。南国では水道水がぬるいのも、身質の劣化につながっている。ここでは冷却水を取り入れて、良い状態に保てるようにしている」のが、品質を保つ秘訣だという。



「うちは、日本料理というよりも、日本料理をローカル化した料理」と城間シェフが語るように、提供している料理には、刺身や寿司だけでなく、低温調理したラム肉にバーベキューソースを合わせた料理や、ハンバーガーなども並ぶ。

寿司も、アスパラガスの天ぷらを巻き、半熟の卵にスパイシーマヨネーズを合わせたものなど、地元の人たちが食べたいものに合わせてアレンジされている。酢飯は日本と比べて、酸が控えめで、やや甘めだ。「アルコールを飲まない人が多く、甘いものが好きな人が多い。酢飯の味付けも、そんな現地の好みに合わせている」と城間シェフは説明する。


この中東というマーケットで、「甘味」というのは一つのキーになりそうだ。

2019年に、ペストリーシェフのヘルナンデスさんは、3 filsの敷地内に「旅」をテーマにデザートコースを提供する別コンセプト「Brix(ブリックス)」をオープン。地元の一般のデザートに比べ、Brixのデザートは甘さ控えめであることから、甘いもの好きの地元の人々の中には、まずデザートコースを食べてから、3 filsでアラカルトで料理を食べるというスタイルも徐々に定着してきているという。



日本料理とペルー料理が合わさって「Nikkei料理」が生まれたように、この中東・北アフリカ地域から、日本料理と地元の料理が合わさった、新しい料理が生まれることはあるだろうかと聞くと、カザディシェフは「もちろんありうると思う。中東のスパイスと日本料理という組み合わせを色々と研究しているところだ」と言う。
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文=仲山今日子

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