酒提供なしの「日本料理店」が、中東・北アフリカNo.1になった理由

「中東・北アフリカベストレストラン50」授賞式にて


3 filsに限らず、中東の地元の一般的なレストランでは、アルコール提供をしない店も少なくないのだという。

城間シェフによると、アルコール提供は酒類提供の免許を取らなくてはならず、高級ホテルや大手の飲食グループなどが中心。「3 fils」の場合は、オーナーの宗教的な思いがあるためだが、そもそも小規模な個人店は免許を取るのが難しい背景があるという。それが、日本と全く同じ料理を作ることを難しくしている部分もあるそうだ。



「調理にアルコールを使うのも許可制で、その免許をとっていないため、日本料理に欠かせないみりんや料理酒も、うちの店では使えない。もちろん、使うのはハラル食材のみで、豚肉はご法度。そんな制約が多いイスラム地域でも、日本料理は、使う食材の種類もテクニックも多く柔軟に対応できる、懐の深さが魅力ではないか」と城間シェフ。

アルコール提供をせず、ハラル対応も行っているから、きちんとイスラムの教えを守っている店として地元の信頼も厚く、「自分たちの店」として、広く支持されている部分もあるという。

3 filsを訪れて印象に残ったのは、アットホームな雰囲気だ。キッズメニューもあり、ゲストの子どもをあやすスタッフの姿もあり、家族で気軽に来れるのだと感じた。価格帯も比較的カジュアルだ。

イスラムの国々では、伝統を守り、今も大家族で食事をすることが少なくない。アルコール提供よりも、宗教的な規範に則った安心感と、誰もが「自分の食べたいものがある」メニュー展開、家族的なホスピタリティが、今のこの地域のニーズにフィットしていると言えるだろう。

文=仲山今日子

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