米国における科学への信頼低下は、アンソニー・ファウチ博士などコロナ対策にあたる公衆衛生専門家への非難というかたちで表れている。また、マスク着用は感染抑制に効果があると科学的に証明されているにもかかわらず、パンデミック中に広く呼びかけられたマスク着用措置も批判の的となっている。
ワクチン接種の開始に伴い、その安全性や効果をめぐる誤情報も次々と広がり、公衆衛生ガイダンスへの不信感を呼び起こした。米国では、ワクチン接種反対派の割合が依然として高い。世論調査は、接種を拒む最大の集団が共和党支持者であることが一貫して示されている。
パンデミックが続くなか、抗寄生虫薬である「イベルメクチン」など、有効性が立証されていない治療薬が話題を集めた。公衆衛生専門家が効果ゼロだと明確に述べているにもかかわらず、イベルメクチンを投与するよう求めて医療機関を訴えるケースすらある。
科学的根拠への不信感に加えて、米疾病予防管理センター(CDC)は、マスク着用や陽性判明後の隔離期間など、コロナ対策をめぐる公衆衛生の推奨内容が二転三転したため批判にさらされてきた。ピュー・リサーチ・センターの別の最新世論調査では、「CDCが発表する推奨内容の変更がわかりにくい」と回答した米国の成人は60%で、民主党と共和党のいずれの支持者も過半数を超えた。また、CDCの推奨事項が変わったことで信頼度が「低下した」と回答した人は56%だった。