ビジネス

2022.02.22

「サムい、痛い、眠い」企画会議を天才集団に変える方法


ミラクルワードカードとは、各カードにひとつずつ形容詞が記載されている。一人にカードを10枚ずつ配り、手札の中から面白いアイデアが出そうなものを選ぶ。「せーの」で一斉にカードを見せ合い、順番に自分が選んだミラクルワードについて説明する。それに対して、参加者全員で思いついたアイデアを膨らませる。意外な言葉の組み合わせが生まれ、深刻な社会問題ですら楽しく解決するアイデアにつながる。カードを開発した電通Bチームの大山徹と鳥巣智行(現Better Inc.)に聞いた。

大山:NHKのEテレで「ピタゴラスイッチ」を見ていたら、ある日、「大人のピタゴラスイッチ」という特番をやっていました。いい意味で「ずるいな」と笑いました。「大人の」と頭につけると、面白そうで発想が膨らみます。調べてみると、「泊まれる水族館」などヒット企画には頭に何かを組み合わせたものが多い。修飾語を200から300ほどピックアップしました。例えば、言葉の後ろに「ラボ」をつけて「コーヒーラボ」というと、企画っぽくなって「何、それ?」と興味が湧きますよね。



鳥巣:その頃、群馬県の自治体から「地元の特産である味噌や団子を売り出したものの、伸び悩んでいる」ということで、ワークショップをしてほしいと声がかかりました。当時集めていたミラクルワードを自分で紙に印刷してカッターで切ってカードをつくり、公民館に中学生から60代まで30人ほど集めてワークショップをやると、盛り上がったのです。

集めた修飾語は「1000年に一度の__」とか「とにかく明るい安村」さんから「とにかく明るい__」を頂いたり、「紀州のドンファン」(※この頃はまだ殺人事件には至っていなかった)から「__のドンファン」「趣味と実益を兼ねた__」「スモール__」などです。ビジネスで多用される「スマート__」「AI__」は中身がなく、発想が広がりませんでした。また、バズワードを取り上げたら企画になるわけではありません。

──確かに私は職業柄、「100年に一度の」という修飾語を、リーマン・ショックを記事にする時に常套句で使いますが、「100年に一度の和食」と言われると、面白いことを考えたくなります。それが「1000年に一度の」となると、どこにもないオリジナル企画が生まれそうです。どういうところからミラクルワードカードの要請はありましたか?

大山:自治体や商品開発の現場から声をかけていただきますが、変わったところでは兵庫県の商業高校から呼んでいただきました。商業高校は簿記など資格に特化した学習はありますが、言葉にまつわるマーケティングや商品開発の発想法は教えていないそうです。あとはシンガポールの広告業界のセミナーやアメリカにある工科大学の研究室で即席の英語版マジックワードカードをつくり、面白がられたことがあります。
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文=藤吉雅春

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