コロナ感染者の精神疾患リスク、軽症でも上昇 米研究結果

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新型コロナウイルスの感染者は、陽性の確認から1年後までに精神疾患と診断されたり、症状の改善のために薬を処方されたりする可能性が大幅に高まっていたことが確認された。

英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに発表された査読済みの論文によると、米退役軍人省の医療記録を分析した結果、感染した人がその後に精神疾患の診断を受ける可能性は46%、薬を処方される可能性は86%上昇していた。

また、疾患別に調査したところ、診断されるリスクは、うつ病が40%、不安障害が35%、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などが30%、睡眠障害が41%上昇していた。

研究チームは、こうしたメンタルヘルスに関するリスクの上昇は、感染して入院した人に多くみられた一方、「入院の必要がなかった人たちにも、明確にみられた」と指摘している。つまり、感染した人の「大半」に関連があるという。

チームはまた、季節性インフルエンザや新型コロナウイルス以外に感染し、入院が必要になった人にも同様の傾向がみられるかどうかについても調査した。その結果、精神疾患のリスクは他のどの患者グループと比べても、新型コロナウイルスに感染した人たちの方が高くなっていた。

新型コロナウイルスへの感染と精神疾患の発症リスクの関連性について、その正確なメカニズムについては、いまだ完全には明らかにはされていない。ただ、「脳の炎症や免疫細胞の脳・中枢神経系への侵入」「心痛、トラウマ、孤立といった非生物学的な問題」が、そのメカニズムの一部として考えられている。

研究チームによると、今回の研究では、ワクチン接種とこうした傾向の関連性については調べていない。また、観察研究であり、こうしたリスクが上昇する原因を特定することはできないことに注意が必要だ。また、調査対象者の大半が白人の高齢男性であることから、ほかのすべての人にも例外なく当てはまるものではない可能性もある。

ただ、パンデミックの発生以降、感染がメンタルヘルスの問題を引き起こすことについては、すでに複数の研究結果が発表されている。感染がメンタルヘルスに与える影響は、問題を抱える人たちを支援するネットワークがパンデミックによってサービスを縮小したこと、オンライン化が進んだことによっても、さらに拡大したとみられている。

戦略的な対応が不可欠


在宅勤務や都市封鎖、社会的制約など、パンデミックが暮らしにもたらした変化は、私たちの日常生活やメンタルヘルスに著しい影響を与え、新たなストレスを生み出した。これらは同時に、これまでの日常を破壊し、従来からあるストレスを増幅させた。

現在までに新型コロナウイルスに感染したと報告されているのは、世界人口のおよそ5%にあたる約4億2000万人だ。研究者らは、メンタルヘルスの問題に直面している人の数は、相当数にのぼるはずだと指摘している。

その上で、医療制度、各国政府、国際的な活動組織は、「緊急を要する問題」として、影響を受けている人たちを特定し、治療するための「戦略を策定し、実行する必要がある」と訴えている。

編集=木内涼子

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