ビジネス

2022.02.20 17:00

研究者からビジネスの世界へ。異例の転身を遂げた才能が描くデータ活用の未来

植野大輔(左)と北川拓也(右)

CxO(シーエックスオー)は、トップであるCEOを組織の要として支えるスペシャリストたち。CCO、CFO、CIO、CLO、CMO、COO、CSO、CTO……こうした役職に必要な能力と条件、その立場から得られる知見とは? ローソンとファミリーマートのデジタル戦略を担った「コンビニの改革者」の植野大輔が、注目の人物にインタビューするシリーズ。

Vol.5 北川拓也 楽天 常務執行役員 テクノロジーサービスディビジョンCDO


植野:北川さんの「CDO」という肩書はChief Data Officer(最高データ責任者)。データで経営をドリブンするという意味ですよね。

北川:AIとデータの責任者としてまずやっている仕事は、70以上のサービスデータを集め、グループ全体で使えるかたちに整える役割です。

植野:DMP(※1)みたいなプラットフォームをちゃんとつくるということですね。

※1 DMP(Data Management Platform):インターネットを介して収集された多種多様なデータを蓄積・管理するプラットフォーム。購買や行動履歴、属性などのユーザー情報を解析して、ターゲティングやパーソナライズに生かせる。

北川:そうです。楽天はメンバーシップカンパニーになるという命題があるのでマーケティング系のプロダクトが多いのですが、データプラットフォームをもとに全社で使えるAIプロダクトもつくります。

データとAIプロダクトを使って各事業や外に対してコンサルティングサービスを提供するほか、R&D部門である楽天技術研究所も運営しています。

植野:具体的なサービスにつながる役割では?

北川:わかりやすいのは、何を買ったか、在庫需要はどうかというEコマース商品の裏側のデータをまとめた「商品カタログ」づくりです。それがないとシステムが回りません。楽天モバイルのショップをどの立地にオープンするかもAIで決めたりします。

植野:これから目指したいサービスはありますか。

北川:メーカーさんやブランドさんと一緒に商品開発を進めたいですね。例えば、楽天の検索データを使うと、どんな需要があるか、お客さんがどんな問題を抱えているかが結構わかります。

例えば「パンプス 疲れない」といった単語でよく検索されています。なぜかと言うと、疲れないパンプスを代表するブランドがないからです。つまり、ブランドってお客さんにとってのソリューションなんです。ソリューションが見つからないものに関しては、そのままペイン(※2)が検索されるのです。

※2 ペイン:顧客が解決したいと願っている自身の課題のことで「あると嫌なもの」。反対に、欲しいと思っている「あったらよいもの」をゲイン(Gain)と呼ぶ。どちらも消費やサービスで顧客のニーズを満たす提供価値となる。

植野:ブランド名になっていないペインを探せば商品開発ができる。

北川:まさに。そのペインは世の中に大量にあります。

植野:マーケターたちが参考にする「Googleトレンド」と比べてどうです?

北川:楽天は商品にひも付いた検索なので、より精度が高いはずです。今年どんな色が流行っているか、みたいなこともわかります。

そんな当たり前なことすら、データを定量的に見たことがない人がほとんどです。Eコマースが出て20年たったのに、なぜメーカーやブランドさんにそうしたデータが行き渡っていないのか。実はきちんとした理由があって、自然言語を処理するのがこれまではすごく大変だったから。これをしっかりやって、世の中のペインをメーカーさんやブランドさん、もしくは店舗さんと一緒に解決する仕組みをつくるのが、これから僕のやりたいことです。
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文=神吉弘邦 写真=有高唯之

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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