しかし、有力ブランドの幹部を対象とした最近の調査結果を見ると、大半のトップたちの耳には、いまだに危機を知らせる情報は届いていないようだ。
ファッション業界の中心地である(そして、この業界に投資する人々も集まる)ニューヨーク州では、このたび州議会に新たな法案が提出された。その内容は、ファッション系の企業に対して、驚くほど高いレベルの透明性の確保を義務づけるものだ。透明性は、ESG(環境、社会、ガバナンス)という、サステナブルな投資におけるテーマの中でも最も重要な位置を占める要素の一つだ。
投資家が「環境に配慮した」ポートフォリオに加えるのに適切な株式銘柄を選ぶ際にも、ESGを順守しているかどうかという点が、基準として広く受け入れられつつある。
今回ニューヨーク州議会に提出された、通称「ファッション法(Fashion Act)」では、売上高1億ドル以上という大手アパレル小売企業に対し、自社事業の少なくとも半分について、「環境や社会に与える悪影響」を報告することを義務づけている。
さらに、製品に使われている原材料や、製造や仕上げの過程で使われるエネルギーや水、化学薬品についても詳細を明らかにしなければならない。これらの規定に違反した場合は、最大で年間売上高の2%という高額の罰金が課されるおそれがある。
この法案が、州議会での審議を経て成立にこぎつけるどうかは、予断を許さない。だが、どちらに転ぶとしても、企業にESGの視点を求める動きが具体化するきっかけにはなるはずだ。言ってみれば、「歯磨き粉がチューブから出てしまった」状態であり、今後は二度と、以前の状況には戻らないだろう。
さらに、調査会社ファースト・インサイトと、ペンシルベニア大学ウォートン校のベイカー・リテイリング・センターが行った最新調査によると、サステナビリティは、大半の消費者が最も重視するポイントであることが判明している。
この調査によると、「サステナビリティに配慮して製造された商品なら、他と比べて高価でも買う」と回答した消費者の割合は、全体の3分の2に達した。また、4人に3人が、「ブランド名よりもサステナビリティに高い価値を置く」と答えた。
今どきの消費者にとっては、サステナビリティに配慮して製造された製品こそ、「最新の流行アイテム」なのだ。彼らは、サステナビリティに配慮して製造されたカシミア製のベレー帽に、喜んで320ドルを支払うだろう。この事実は、ファッション界の経営幹部に衝撃を与えるはずだ。