これとは別に、マスクが設立したマスク財団(Musk Foundation)は2020年6月末までの1年間に、約2360万ドルを寄付しており、そのうち約2000万ドルをDAFに寄付していた。
そして残りの約360万ドルを、リバタリアン系のシンクタンクの「メルカトゥス・センター(Mercatus Center)」や、ウィキペディアを運営する「ウィキメディア財団」、学生プログラマーを支援する「ハック・クラブ(Hack Club)」、マスク自身の子どもやスペースXの社員の子どもらが通う実験的な私立学校「アド・アストラ・スクール」などに寄付していた。
総資産のわずか0.1%
これまでのマスクの寄付の総額の約2億3000万ドルは、彼の保有資産のわずか0.1%だ(フォーブスは彼がDAFに移転したとされる57億ドル相当の株式が、実際に慈善団体で使用されることが確認できるまでカウントしない)。
しかし、彼の仲間のウルトラリッチたちは、より誇らしい実績を示している。ウォーレン・バフェットは、生涯で約461億ドルを寄付しており、これは彼の1156億ドルの財産の40%にあたる。
2010年に、バフェットと共に慈善活動の「ギビング・プレッジ(Giving Pledge)」を立ち上げたビル・ゲイツは、元妻と共に334億ドルを寄付しており、これは2人の合計の資産の1407億ドルの約24%にあたる。ジェフ・ベゾスは、21億ドルの寄付を行っており、これは彼の資産1880億ドルの約1%に相当する。
2012年にギビング・プレッジに署名したマスクは、2018年に「約1億ドル相当のテスラ株を数年ごとに、チャリティのために売却する」とツイートしていた。このツイート以降、テスラの株価は1200%も上昇し、マスクは世界トップの富豪に上り詰めた。
マスクの今回の57億ドルの寄付の受取人は、時間が経てば明らかになるだろう。しかし、それまでの間、彼が過去最大の自社株を売却し、過去最大のストック・オプションを行使したその年に、過去最大の寄付を行い、納税額を減らしていたことは覚えておくべきだ。
そして、これまでのマスクの実績から考えて、今回の寄付は、まだそれを必要とする人に届いていないだろうし、しばらくは届かないかもしれない。