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2022.02.19

イーロン・マスク「6600億円寄付」の謎だらけの受取り人

イーロン・マスク / Getty Images

世界トップの富豪であるイーロン・マスクは、2400億ドル(約28兆円)を超える資産を保有しながらも、それにふさわしい寄付を行ってこなかった。

しかし、2月14日に公開されたSEC(米証券取引委員会)への提出書類で、彼が11月に当時57億ドル(約6600億円)相当のテスラ株を匿名の「チャリティ」に寄付していたことが判明した。

これを受けて、マスクが国連の世界食糧計画(WFP)に寄付を行ったという憶測が流れた。マスクは11月のツイートで、国連への寄付をほのめかしていたからだ。

しかし、WFPはそのような寄付をまだ受け取っていないと、15日にフォーブスの取材に回答した。WFPのエグゼクティブ・ディレクターのデビッド・ビーズリーは、「WFPがこの資金を受け取るかどうかはまだ分からない」と述べた。他の慈善団体からも発表はなく、マスクはこの件についてのコメント要請に応じていない。

ニュースサイトMarketWtatchは、マスクの今回の57億ドルの寄付が、DAF(ドナー・アドバイズド・ファンド)と呼ばれる慈善活動用のファンドに移転された可能性を指摘した。DAFは基本的にブラックボックスであり、毎年の分配や寄付先の開示を要求されない。

フォーブスの試算で、マスクはこれまで2億3000万ドル(今回の57億ドルを除く)を寄付しているが、そのうち20%がDAFに支払われていた。

「税控除」が目的の可能性


DAFに株式を寄付することのメリットの一つは、その株式が慈善活動用の貯蔵タンクのような場所に置かれていても、寄付をした時点でその年の調整後総所得の30%もの税額控除を受けられる点だ。

マスクがその資金を自分の財団に寄付していたことも想定でき、その場合でも、彼は所得税の控除を受けられる。しかし、DAFに直接寄付する場合とは異なり、財団は毎年資産の5%程度を分配することを求められる。

少なくともこれまでのところ、マスクは世界のビリオネアの中で、慈善活動にあまり熱心ではない人物に位置づけられてきたが、2021年1月のRecodeの記事で彼は累計1億ドルを寄付したとされており、その年の2月には、さらに1億ドルをCO2削減技術の開発を競う「Xプライズコンテスト」に寄付していた。

マスクの代理人によると、彼はその1億ドルの半分強を、賞を監督するXプライズ財団に分配し、500万ドルを、学生を中心とした23のチームの支援に充てている。
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翻訳・編集=上田裕資

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