Web3やメタバースの波に乗れ? 起業家は流行をどう捉えるべきか

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Web3・メタバースそのものが本質的にどんな価値を提供しているのか、現在の時点ではまだ明らかになっているとは言えない。概念や仕組みだけでは、本質的な価値を生み出すことはできないのだ。

1990年代のドット・コム・バブルがそうだったように、ただインターネットというだけで価値が創造されるわけではなく、それが顧客の問題を解決する手段として有効に機能し、本質的な価値を生み出すようになるまでには、長い時間と数えきれないほどの試行錯誤と失敗の積み重ねが必要だったのだ。

1990年代にインターネットに出会い、以来ずっとテクノロジーの世界に身を置いてきた自分自身に、ことあるごとに言い聞かせていることがある。次のようなものだ。

「テクノロジーそのものに惚れ込むな。テクノロジーはあくまでも手段であって、目的であってはならない」

テクノロジーの世界は本当にエキサイティングだ。新しいテクノロジーが出現すると、あんなこともできる、こんなこともできる、そう勝手に妄想を繰り広げるのがとても楽しい。テクノロジーの世界で起業する皆さんもきっと同じだろう。

でもそこが起業家にとっては落とし穴になることがあるのだ。テクノロジーを理解することは重要だが、惚れ込み過ぎるとそれを使うことが目的になってしまう。

4年前に書いたちょっと古いブログだが、こちらを読んでみていただきたい。1997年にアップルのスティーブ・ジョブズが開発者向けのカンファレンスで話をしているビデオを紹介しているが、彼自身が技術に惚れ込みすぎることで失敗を重ねて来たこと、カスタマーエクスペリエンスを起点にテクノロジーに逆戻りして考えることの重要性を説いている。

最終的にプロダクトが価値を生み出しているかどうかを判断するのは起業家のあなたではなく、それを使う人たち、すなわち顧客だ。そして多くの顧客にとって、そこで使われているテクノロジーが何であるのかはおそらく重要ではないし、気にもしていない。あなたのプロダクトが問題を解決してくれているのか、そしてそれを対価を支払ってでも使いたいと思えるのか、そこが重要なのだ。

もしあなたが、Web3・メタバースの世界で本当に顧客の問題を解決するプロダクトを提供できるのであれば、ぜひこの波に乗って突っ走ってみてほしい。でも、時々振り返って考えることも忘れずにいてほしい。

テクノロジーが刻々と革新されていくなかでも、顧客提供価値という本質さえ見失わなければ、テクノロジーの流行り廃りに関係なく、めざすべきところは明確になるはずだ。

連載:スタートアップのすゝめ
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文=村瀬 功

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