いまやディズニーやワーナーなどと肩を並べる映画会社でもあるアマゾン・スタジオが、巨費を投じて製作を手掛け、長く語り継がれるようなクオリティの高い作品をつくり出そうとしています。
この背景には、配信プラットフォームの隆盛で、ますます激化するエンターテインメント市場の変容があります。
スーパーボウルでティザー予告初公開
「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」がいかに注目されているかは、1月に発表された正式タイトル動画の反響からも伝わってきます。公開から24時間で約10億回も再生されました。
2月14日(現地時間13日)には、アメリカ最大のスポーツイベントであるNFL優勝決定戦のスーパーボウルで、60秒の公式ティザー予告が初公開されました。全米で4分の1の世帯が視聴するこのイベントでお披露目される価値は高く、その年に最も期待される作品の1つであることを意味します。
また同日には全世界にも公開されたその予告動画では、原作者のJ・R・R・トールキンが「指輪物語」でつくり出した「中つ国」の「第二紀」の世界を描く物語であることも明らかにされました。
60秒の公式ティザー予告 「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」(c)Amazon Studios 2022年9月2日(金)よりPrime Videoにて独占配信予定
新作の舞台となる「第二紀」は、映画「ロード・オブ・ザ・リング」や「ホビット」の遥か数千年前に設定されており、その時代が映像化されるのは今回が初めてとなります。それだけでも指輪の創造をめぐる興味深い冒険物語が展開されるのが期待されます。「中つ国」の風景が広がる映像は、ファンタジーものには欠かせない映像美も約束されていることが窺い知れます。
物語は、平和な時代から始まり、エルフ、ドワーフ、そして人間のヒーローたちが、徐々に「中つ国」に再出現する邪悪なキャラクターたちに立ち向かう、その試練の姿が描かれていきます。
また指輪の製造や冥王サウロンの台頭、ヌーメノールで起こる事件、エルフと人間の同盟など、原作にある「第二紀」の主要な物語もすべて盛り込まれる予定です。ドラマシリーズとして展開されますが、ピーター・ジャクソン監督が手掛けた映画「3部作」に匹敵するような大作になりそうです。
総製作費は破格の約6億5000万ドル
実は、これらの壮大なストーリーを完成させていくために、大規模な投資が計画されていることにも注目が集まっています。イギリスの調査会社「Omdia」によれば、想定される5シーズンに費やされる総製作費は約6億5000万米ドルに上るとされています。ドラマシリーズとしては、群を抜く破格の予算規模です。
想定製作費の約6億5000万ドルのうち、原作権の購入のために2億5000万ドルが費やされたことも同調査会社が明かしています。アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が「われわれには『ゲーム・オブ・スローンズ』が必要だ」と発言したことをきっかけに、今回の企画が走り出されたとも言われています。
世界的に大ヒットするドラマシリーズをつくり出すためには、このファンタジー小説の名作の原作権の獲得は欠かせないものだったのかもしれません。
このところ、ドラマシリーズの製作費予算は、ますます高額化しています。HBOの製作した前述の「ゲーム・オブ・スローンズ」は、全シーズンのなかで最も高額の製作費が投じられた最終の「シーズン8」だけで約1億ドルが投じられました。
またマーベル・スタジオが初めて手掛けたドラマシリーズ「ワンダヴィジョン」は、初回シーズンだけで2億ドル以上の製作費がかけられました。同作はディズニーのグローバル配信プラットフォームDisney+で独占配信されています。