南 壮一郎◎ビジョナル代表取締役社長。米タフツ大学卒業後、現・モルガン・スタンレーMUFG証券に入社。2004年から東北楽天ゴールデンイーグルスの創立メンバーとしてプロ野球新球団に携わった後、09年にビズリーチを創業。20年2月にビズリーチがビジョナルとしてグループ経営体制に移行後、現職に就任。ビジョナルは21年4月に東証マザーズに上場した。
「継続的進化」するIPO
「メルカリ、ラクスル、マネーフォワード、Sansan、freeeといったスタートアップ・エコシステムの同世代の仲間が支えてくれたことが大きかった」
21年4月22日、東証マザーズに上場し、時価総額2491億円(終値)を記録したビジョナル代表取締役社長・南壮一郎はそのように語る。上場時の時価総額は18年6月のメルカリ上場(同7172億円)以来の大きさだ。
「僕らは一連の上場プロセスにおいて『価値があり、正しい上場とは何か』という本質をとらえようと歩んできた。先に上場した仲間たちから上場後の話もふくめて、よかったことやよくなかったことを共有してもらった。それがあって『上場後に何をしたいのか』『何のために上場したいのか』という本質的な要件定義ができた」(南)
同社のIPOの特徴は、時価総額、オファリングサイズ(上場時の公募と売り出しを合わせた総額)、そして海外機関投資家比率の3つだ。上場時には米国を含む海外機関投資家に募集・売り出しを行うグローバルオファリングを実施。オファリングサイズ約680億円、海外機関投資家比率は国内スタートアップとしては過去最大の約89%にのぼる。海外機関投資家向けの仮目論見書で、米運用会社大手のキャピタル・インターナショナルなど3社による関心に言及するなど、日本企業では珍しい手法も使った。
従来、新興市場では、上場時の規模感が小さく、海外を中心にした機関投資家の投資対象にならなかったのに対して、その門戸を開き、拡張させていったのが冒頭の南の言葉にあった企業たちだ。18年5月に上場したラクスル、同6月のメルカリ、19年6月のSansan、19年12月のfreee、20年12月のプレイドが続けて、海外機関
投資家からの投資を受けてきた。南は海外投資家への売り出しについて「海外展開がしたいからではない。自分たちのあるべき姿を伝え、中長期的な目線で企業価値の向上を信じてくれる海外機関投資家の比率を高め、よいパートナーとして上場というスタートラインに立つためだ」と話す。
ビジョナルは上場後も市場からの評価は堅調で、時価総額3195億円(21年11月10日時点)だ。