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2022.02.18 13:00

世界が舞台に! 明るい未来を生み出す、スタートアップ・エコシステム進化論

Forbes JAPAN編集部
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M&A(合併・買収)、IPO(新規株式公開)、ポストIPOスタートアップ──。2021年、日本のスタートアップ・エコシステムは大きな進化を遂げた。


「まるで四季が消滅し、永遠の夏が続いているようだ」

2012年からシンガポールに滞在しながら、日本のスタートアップ・エコシステムを見てきた、GMOペイメントゲートウェイ副社長、GMO Venture Partnersファウンディングパートナーの村松竜は指摘する。従来のような7〜8年周期でのスタートアップ投資の景気の上昇・下降のサイクルがなく、右肩上がりの「好景気」が10年近く続いていることをそう例える。「世界中、そして日本で起きている『気候変動』により、生態系に大きな変化が起きているのがいまだ。スタートアップ企業が巨大化したり新種が発生したり、国境や(投資家による)上場・未上場の境目がなくなっていることは当然の変化だ」(村松)

2021年9月、日本の「スタートアップ生態系」の変化にとって、エポックメーキングな出来事が起きた。米決済大手ペイパル・ホールディングスによる、あと払い決済のPaidyのM&A(合併・買収)だ。時価総額2653億ドルの世界的トップティア企業による日本のユニコーン企業に対する3000億円での買収は、その規模感とともに、大きな話題を呼んだ。


ピーター・ケネバン(写真中央)◎ペイパル日本事業統括責任者。マッキンゼー・アンド・カンパニー・シニアパートナーを経て2021年4月より現職。|ラッセル・カマー(写真左)◎Paidy代表取締役会長。メリルリンチ証券などを経て08年エクスチェンジコーポレーション(現Paidy)を創業。|杉江 陸(写真右)◎代表取締役社長兼CEO。新生フィナンシャル代表取締役社長、新生銀行常務などを歴任し、17年11月より現職。

「衝撃をもって受け止められたことに驚いている」と話すのは、ペイパル日本事業統括責任者のピーター・ケネバンだ。同社は世界全体で4億以上の稼働口座を持ち、加盟店は3200万に達する、巨大なグローバルネットワークを有する。米国の決済アプリ市場では高いシェアだが、日本では越境ECの決済に注力し稼働口座は430万にとどまる。そんななか、世界3位のEC市場で、キャッシュレス化が出遅れている日本を有望市場と見ている。「僕らの共通目標は『Win JAPAN』。日本での事業展開を加速するための強力な基盤になる。金額は当然、妥当であり、それ以上の期待をしている」(ケネバン)
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文=山本智之 イラスト=Kouzou Sakai 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.089 2022年1月号(2021/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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