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2022.02.28 16:00

世界からリスペクトされるテクノロジー企業へ──NECに再び宿った、揺るぎない挑戦への決意

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「NECは、一体何の会社になるのか」

遡ること約10年前。

リーマンショックや東日本大震災の影響を受け、多くの企業と同様に業績を下方修正せざるを得なかったNEC。業績回復、そして利益体質に生まれ変わるべく同社は2012年に構造改革を実施した。並行して、翌年から始まる新たな中期経営計画についても検討が進められていた。

その中で議題に上がったのが、冒頭の問いである。

組織の根幹を見つめ直すため集まったトップマネジメントたち。そこには本記事の主役、松倉肇(現CHRO)もいた。

当時、経営企画部長を務めていた松倉は、構造改革の中で社員の動揺を肌で感じていたという。テーブルの一角に座り、彼は問いに対する答えを考えていた。

そして「ただ変わるのではなく、圧倒的な変革を遂げなくてはならない」それだけは確かだと、感じていた。

おびただしい量の言葉の中に、自分たちのDNAを見出した


「テクノロジーは強いがそれをマネタイズできていない。さまざまな内容の施策を中期経営計画に盛り込んだが、どれも次のステップにつながらない。‟何を変えるべきなのか”を早急に見定めなくてはNECに未来はないと、マネジメントチームは分かっていました」

会議室のテーブルの上に重ねられたのは、おびただしい量の付箋紙だった。書かれているのは、それぞれが考える「自分たちが提供したい価値」。誰もが変革の核を探していたのだ。

何時間経っただろうか。

そこに、ある言葉が表れた。現在のNECのPurposeの中にある「安全・安心・公平・効率」だ。シンプル且つ、捻りなしの直球。だが、NECのDNAの中に組み込まれた思想だと、誰もが感じた。

「霧の中を走っているようだったNECに光が見えてきた瞬間だった」と、松倉は語る。

外部コンサルティングに依頼して作る綺麗な言葉ではなく、正真正銘、自分たちの中から絞り出した言葉。これを掲げることで、NECに立ち込めていた霧は瞬く間に晴れ、進むべき道が目の前に広がったのだ。

「NECはテクノロジーをベースとした社会価値を作り上げ、グローバル市場で勝ち抜く企業になる」

NECは、ギアチェンジしたかのように一気に変革に向けて走り出した。

残すべきは、NECマインド。変えるべきは、行き過ぎた保守的風土


だがそこからの物語は単純ではなかった。

数年後、2017年に子会社の社長からCSO(最高戦略責任者)として戻ってきた松倉は頭を抱える。順調に成長軌道に乗れると考えていたNECの業績が大きく崩れ、当時の中期経営計画を撤回。心機一転、出直さざるを得なくなったのだ。

「変えるべきは戦略内容か、それを実現するための実行力か。私たちは、実行力の改革こそが必要だという答えを出しました。変化の激しいテクノロジーの領域で戦うならば、その変化に対応して戦略はどんどん変えていくべきです。であれば、必要なのは変化に対応する力。社員の力、実行力を圧倒的に高めていくことこそ、我々には必要だったんです」

かくして「実行力の改革」が、NECの2020中期経営計画に盛り込まれることになった。

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実行力の改革、それは「人」と強く結び付いている。

NECの人事改革の中核は、「NEC Way」(2020年4月改定)だ。松倉が人材育成の根幹だとする「Code of Values」(行動基準)もここに記されている。

視線は外向き、未来を見通すように

思考はシンプル、戦略を示せるように

心は情熱的、自らやり遂げるように

行動はスピード、チャンスを逃さぬように

組織はオープン、全員が成長できるように

「とても高い目標ですよね?(笑) でも、これを100%達成している人は、マネジメント層でもそうそういないと思います。だからこそ各要所で社員が立ち返る基点になれるんです」

NECの中にある思想を明文化した言葉たち。それらが示すものこそが「変えてはならないマインド」なのだと、松倉は語った。

一方で、変わるべきものも自らの中にあった。大企業ならではの、保守化した心だ。NECの誠実で、世界に誇れる技術を守り抜く風土。その一方で挑戦心を失っていた。

「お客様にきちんとサービスを提供することにこだわるあまり、私たちは新たな価値を創造する力を失っていきました。とにかく企業風土を、守りから攻めに変えなければならない。失敗してもいいからチャレンジしようという風土をつくることが、企業再生への道だったんです」

大企業の変革は、往々にして強いトップダウンで実行される。しかし、NECは違っていた。

「どうなってほしいかは全てNEC Wayの中にある。これに共鳴するならば、自由に考え、どんどん実行せよ」NECはそう社員に伝えたのだ。

自ら考え、自ら行動する人が集まる企業は強い。成長する個々の力が、企業を強くするからだ。グローバル市場に存在するコンペティターと戦うためにNECは、社員の行動力に期待した。

「それぞれの社員が、NECという場で自分を成長させたいと思うことでしか会社は変わっていかない」

だからこそ、成長への挑戦を全力でサポートできる人材育成の制度、そして職場環境を含む環境整備を、松倉は猛スピードで進めた。

社員の声から、価値創造のエコシステムを作る


人事改革とカルチャー変革を中核とする“Project RISE”を2018年に始動させたNEC。

まず、タウンホールミーティングやアンケートで徹底的に社員の声を拾った。そしてそこから具体的な施策を進めた。

一つは「Smart Work」だ。端末の配布からネットワークインフラの整備を急ピッチで実施。2018年には社員全員がテレワークをできる環境を整えた。ここまではよくある「働きやすさの追求」だ。

しかし、それだけで終わらない。「働きやすさ」から「働きがいの追求」へとステージを移し、「Smart Work2.0」に着手する。目指すは、社員それぞれが最高のパフォーマンスを上げられる場所、時間、キャリアを選択できる環境、制度の確立だった。

「今は、各チームが自分たちで一番良い働き方を選択しています。オフィスはコミュニケーションハブ。話し合いなどで使用し、その他はロケーションフリーとしています。また、パートナーやお客様と新たなイノベーションを起こすための共創空間も用意し、パートナリングを強化。社内で価値創造のエコシステムを回せるようにしました」

また、VOE(ボイス・オブ・エンプロイー)経営にも積極的なNECは、四半期ごとにサーベイを取り、なんと部署ごとの結果を公表しているのだという。あまりに頻繁で、透明性が高過ぎるのではと驚くが、これにより、刺激し合いながらより良い職場環境を各部門が自ら作ることができているのだ。その他、社内人材公募の通年化など、やりたい仕事に対する機会創出にも力を注いでいた。

こうした動きから、当初は半信半疑だった社員にも「トップから変わる」というマネジメントチームの本気度がじわじわと伝わっていったと言う。

自由な選択の中には厳しさもある。「自律した個人を求め、実績を残した人にはきちんと報いるという、Pay for Performanceの考え方を徹底しているので、甘くはない。その中でそれぞれの価値を磨き、成長をしていってほしいんです」と、松倉は語った。

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「お手並み拝見」に対しては、まぁ見ていてくださいと


「またNECさんはすごいことをやり始めましたね。壮大な実験を始めたんですか?」と言われることもあるという。

「100年以上歴史のある会社が文化、人事改革なんてできるはずがない。そう言われると燃えますね。ただ、人の内面に関わる部分を変えていくのは短期間でできることではないと実感してもいます。今は、少しずつ手応えを感じているところ。まあ、見ていてください、という気持ちです」

1985年からNECに身を置く松倉は「こんなに長くNECにいたっけ?」と思うことがあるという。それは、数字で戦略検討をする経営企画から数字で判断できない人事分野まで、「やりたい、やらねば」と感じたことを長年にわたって挑戦し続けたからなのだろう。

「ジェットコースターに乗っている時は、楽しくて夢中になっている。そのくらい、やりたいことにどんどん挑戦し、面白くて仕方ないと思える毎日を社員の皆さんには送ってほしいですね。これからは、会社と社員がますます対等になっていくはずです。成長できるからここにいる、と社員から言われる会社でありたいです」

NECが目指すのは「選ばれる企業」。大手だから、安定しているからではない。挑戦し、成長できるから選ばれる。そのために、NECは変革への道を歩み続けるのだ。

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