HIV感染の女性が初めて寛解達成、臍帯血の幹細胞で治療

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エイズ (AIDS、後天性免疫不全症候群)発症の原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染した女性が、臍帯血(へその緒と胎盤に含まれる血液)由来の幹細胞を利用した治療法によって、治癒した可能性があることが報告された。

ニューヨーク長老派教会病院/ワイル・コーネル医療センターによると、治療によって寛解(完全に治った「治癒」の状態ではないが、症状がほぼ消失)の状態にあることが確認されたHIV感染者は、この患者が3例目。女性では初となる。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、この女性はHIVの増殖を阻止するように変異させた臍帯由来幹細胞と、成人の親族から提供を受けた幹細胞の移植を受け、2020年10月に治療を中断したと伝えている。その後も感染の兆候はみられていないという。

幹細胞治療は、化学療法や放射線療法によって患者の免疫システムを破壊し、新たな細胞を使って再構築させるもので、非常に危険なものだ。そのため、がんをはじめ、生命に関わる病気以外の治療法には適さないものだされている。

ただ、臍帯血由来の幹細胞を用いる治療法は、HIVの治療に成功したほか2人の患者が受けた成体幹細胞の移植による治療よりも、より多くの人に適用することが可能だとみられている。

臍帯血を使用する場合は患者の遺伝子型との適合性を問題にする必要がなく、適切なドナーを見つけやすくなるためで、研究者らは、おそらく年間50人程度が、この方法での治療を受けられるようになると見込んでいる。

治療法はいまだ確立されず


米疾病対策センター(CDC)によると、ヒトがチンパンジーからHIVに感染したのは、早ければ1800年代後半だった可能性がある。だが、米国でこの病気が確認されたのは、1970年代だ。

HIV感染は、免疫の機能を極度に低下させるエイズの発症につながり、発症すれば、そうでなければ軽症で済む病気も命にかかわるものになる。ただ、完全に治療する方法は確立されていないものの、抗レトロウイルス療法によってエイズの発症を防ぎ、健康で、より長く生きることは可能になっている。

初めてHIV患者の寛解が報告されたのは、2008年。ドイツ・ベルリンで、まれな突然変異が確認され、遺伝子型が患者と適合する幹細胞を用いた治療が行われた。ただし、同じ方法で治療を受けた患者のうち、少なくとも2人は数ヵ月後に、再びHIV陽性が確認されている。

CDCは、米国で確認されている13歳以上のHIV感染者は、2019年の時点でおよそ119万人にのぼると報告している。

編集=木内涼子

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