経済・社会

2022.02.17 11:10

人種差別を助長する米国政府の「監視カメラ」に高まる批判

Frank11 / Shutterstock.com

今、あなたがニューヨーク市内を歩いているとしたら、あなたの顔は監視カメラで撮影され、顔認識ソフトウェアによって判別されている可能性が高い。特に黒人やアジア人、ヒスパニック系が多い地域の場合、その可能性はさらに高まる。

人権NGOのアムネスティ・インターナショナルが、グーグルマップでニューヨーク市内の4万3400の交差点を確認したところ、2万5000台の監視カメラが発見されたという。設置台数が最も多かったのはブルックリンの9230台で、2番目はクイーンズの7580台だった。

また、非白人の割合が高い地域ほど、顔認識ソフトウェアに対応した監視カメラの設置台数が多いことも判明した。

顔認識ソフトは白人に比べて黒人の顔を誤認識する場合が多く、不当逮捕につながったケースもある。「顔認識技術は人権に関する原則に適合していない」とアムネスティのアドバイザーを務めるMatt Mahmoudiは述べている。

アムネスティは2月14日、ニューヨーク市内に数千台もの監視カメラが設置されていることを強調するためのマップを作成した。このマップを使うと、あるルートを歩いたときに、歩行者の顔を判別する可能性のあるカメラが何台設置されているか把握することができる。

フォーブスが、このマップを試してみたところ、ウォール街の75番地からHighline Pizzeriaまでの区間の経路の55%に監視カメラが設置されており、顔認識ソフトにさらされる可能性が高いことがわかった。アムネスティによると、2020年にマンハッタンのワシントン・スクエア公園周辺で行われたBLM(ブラック・ライブズ・マター)のデモに参加した人は、全経路において、顔認識技術による監視を受けるリスクがあったという。

Mahmoudiは、この研究をきっかけに人々が顔認識カメラ禁止する法的措置を求めるようになることを期待している。「今回の調査結果は、ニューヨーク市警の責任を追及することを呼びかけるものでもある」とMahmoudiは述べた。

NY市長は監視を推進


監視テクノロジーの抑制を目指す団体のSurveillance Technology Oversight Project(STOP)は昨年8月、ニューヨーク市警が2億7700万ドル以上の監視機器を密かに購入していたことを突き止め、非難した。

ニューヨーク市警は、顔認識テクノロジーを積極的に活用していることで知られている。本件についてニューヨーク市警にコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。

米国の一部では、警察による顔認識技術の使用を法律で規制しているが、全面的に禁止している州は存在しない。ニュースサイトThe Vergeが、全米で最も規制が厳しいと報じたメイン州は昨年、身元不明者が重大な犯罪を犯しているなど正当な理由がない限り、警察による顔認識技術の使用を禁じた。

上院議員のエドワード・マーキーと、ジェフリー・マークリー、下院議員のプラミラ・ジャヤパルとアヤンナ・プレスリーは先日、顔認識テクノロジーの「Clearview」を使用しているFBI(連邦捜査局)やICE(移民・関税執行局)などの機関に対し、使用の中止を求める書簡を提出した。

一方、ニューヨーク市長のエリック・アダムスは、市内における顔認識技術の利用拡大を目指している。彼は、1月に次のように述べていた。

「問題を特定し、手掛かりを追って証拠を集めるために、顔認識技術や武器を携帯する者を発見できるツールを導入するなど、あらゆる手段を用いて市民の安全を守っていく」

編集=上田裕資

ForbesBrandVoice

人気記事