ロシアがウクライナ侵攻なら起きる難民危機、欧州各国が準備開始

2月14日のボルィースピリ国際空港(Stringer/Anadolu Agency via Getty Images)

ロシアはウクライナへの侵攻の可能性を否定し続けている。だが、実際にはウクライナとの国境付近に十数万人規模の部隊を配備している。こうした状況を受け、多くの国はウクライナからの避難民の流入に備えた準備を始めている。

ポーランドのマリウシュ・カミンスキ内相は先ごろ、ロシアが攻撃を開始すれば、ウクライナからは安全を求める避難民が流入する可能性があるとして、「準備を開始した」とツイート。

同国のマチェイ・ワシク副内相はこれに先立ち、出演した同国のラジオ番組で、ウクライナからは「最大100万人の避難民が流入することもあり得る」と発言。「もちろん、彼らを助けることに対し、われわれが“ノー”と言うことはない」としている。

一方、米紙ワシントンポストによると、イスラエル当局はウクライナから避難してくるユダヤ系ウクライナ人の支援に向けた準備を始めているという。2014年にロシアがクリミア半島を併合したときにも、多くのウクライナ市民がイスラエルに逃れている。

また、国家主義的で“独裁的”といわれるハンガリーのオルバン・ビクトル首相は国民に対し、ロシアが侵攻すれば、ウクライナからの避難民が国境を越えて隣国に流入することになると警告している。

AP通信よれば、ビクトル首相は「ハンガリーにとっての最大の利益は、ロシアとウクライナの戦争を避けることだ」と述べている。首相はこれまでも、難民の受け入れに断固として反対してきた。2018年には、「不法な移民を支援する」弁護士や活動家に対し、最長1年の禁錮刑を科す法律を成立させている。

東欧ではすでに難民問題が深刻化


ウクライナからの避難民の流入が始まれば、ポーランドにとってはここ数カ月の間に直面する2度目の“危機”となる。欧州連合(EU)は(旧ソ連構成国である)ベラルーシに制裁を科しているが、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領はそれに対する報復として、中東からの難民数千人をポーランドとの国境付近に集結させていると非難されている。

米国の「難民危機」への対応は?


ジョー・バイデン米大統領は先ごろ行ったウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会談で、難民危機の問題については触れなかったという。米国務省とホワイトハウスは、「政府は欧州各国と同様に難民の流入に対する準備を進めているのか」とのフォーブスの質問に対し、今のところ回答していない。

また、EUが難民の流入にどのように対応するかについても、現時点では明らかではない。だが、欧州議会は1月、欧州委員会の移住・内務担当、予算担当の委員それぞれに対し、"EUが意表を突かれたり、圧倒されたりすることがないようにするため"、ウクライナからの避難民の流入に向けた具体的な計画を策定するよう要請している。

編集=木内涼子

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