さらに言えば、MCCPDCは、既存の薬剤給付管理(PBM)企業が独占的な地位を占めているという、より大きな問題に取り組む姿勢を見せていない。
PBM業界では、CVSケアマーク、エクスプレス・スクリプツ、オプタムRXの大手3社が市場の8割以上を支配している。一方、MCCPDCの競争相手は小売薬局だ。身もふたもない言い方をすれば、こうした小売薬局は大手PBM企業の完全な支配下にあり、これは今後も変わらないだろう。小売薬局が、現在行っている保険金請求の手続きを取りやめ、自己負担による医薬品の購入しか受け付けない方針に転換したなら、ほぼすべての取引を失ってしまうはずだ。
医療業界では、「透明性」がバズワードとなっている。その理由は容易に理解できる。米国の医療市場には、全体的に透明性が欠如しているからだ。透明性が確保されない状態では、市場は最適な形で機能できない。そして、ビリオネアであるマーク・キューバンは、透明性の欠如と戦ってきたことでは定評のある人物だ。
さらにMCCPDCは、患者がそれなしでは生きていけない、命を救う薬の入手を容易にした点において、価値あるサービスを提供している。同社の最高経営責任者(CEO)を務めるアレックス・オシュマヤンスキーは、ある声明で以下のように述べている。「行動を起こし、最も必要としている人々への医薬品のアクセスを拡張するために努力することが急務だ」
事実、MCCPDCは現在でも、糖尿病やがん、ぜんそく、心血管疾患といった病気の治療薬を提供している。
キューバンが立ち上げたオンライン薬局の構想は、確かに斬新だ。だが、取り扱う医薬品が限られているうえ、自費での支払いしか受け付けないという事業形態のため、処方薬市場全体に破壊的な変化をもたらすとまでは言えないだろう。