ビジネス

2022.02.20

コロナ禍でも観光事業を足踏みさせない 岐阜県の海外プロモ戦略

コロナ禍で海外のパートナーと展開してきた岐阜県の観光プロモーションとは(c)ynote_paris


実は、海外との往来が難しくなる直前、そのビバリーヒルズのショップオーナーを岐阜県に招請することができた。その際には、県内各地の写真を撮影してもらったり、丼などの製造業者も紹介したりした。その結果、オンラインサイトには丼に合う料理のレシピ動画まで掲載していただき、美濃焼の魅力が存分に発信された。

結果、開始から数日でほとんどの商品が売り切れ、再入荷待ちという驚くほどの販売につながった。そのなかでも、いちばん嬉しかったのは、オーナーから届いた「いつも応援していただいて、こんなに光栄で頼もしいことがありません。前向きに頑張ります」というメッセージだった。

最後に紹介するのは、パリで行なわれたプロモーションだ。岐阜県とは長いつきあいのある、パリの中心部にある有名シェフたちも通うエピスリー兼カフェ「da rosa」によるものだ。

null
(c)ynote_paris

ここでは2021年10月、オーナと知事とのオンライン懇談により、毎月このカフェで大なり小なりの飛驒牛フェアを実施することになった。それを機に外出自粛が解かれた同年末、飛驒牛とともに7種類の地酒の試飲イベント、県産品、そして観光のPRが実施された。

まずフランスで取扱いのある岐阜県の地酒の銘柄や在庫確認を行い、オーナーによる試飲を経て、オリジナルの飛騨牛メニューに合う地酒を選択する。その際には、パリでの購入のしやすさも考慮したとのこと。さらにフランスでは日本酒をワイングラスで飲むことが多いため、ショップ所有のワイングラスも使用した。

お客様には、美濃焼の珪藻土コースターをノベルティとしてプレゼント。コースターの裏面にはアンケートフォームのQRコードを貼り、その地酒の説明とともにアンケートに誘導した。また、試飲時には地酒の瓶の写真をデザインした可愛いコレクティングカードを各種用意して、銘柄、酒類、精米歩合、アルコール度、酒の特徴、そして購入できる場所を記載した。

さらにすべてのカードに「清らかな水、空気、自然から生まれる岐阜の酒。息を飲む岐阜の景色を見て!!」とのキャッチコピーもつけた。ここでもQRコードから岐阜県観光のインスタグラムへとリンクさせ、県の美しい自然や観光地を見てもらえるようにしたという。

null
(c)ynote_paris

まさに、観光、食、ものづくりの一体的なイベントが、パリで岐阜を深く知り、岐阜愛に溢れる人々の手で実施していただけたと言えるだろう。繰り返しにはなるけれど、それはもう10年近くのつきあいのある彼らとの固い信頼関係によるものだと思う。

こうしてこの2年間、世界各地で実施した事業のすべてのショップアンケートへの返答に共通していたのが、「コロナ終息後は、ぜひ、実際に岐阜県を訪れたい」という嬉しい言葉だった。その日がいつになるかは、まだわからない。でも、その日はきっとやってくる。

そして私たちは、その日のために今日も、明日も、海外の人々の顔を決して忘れず、彼らの無事とハッピーを願いつつ、地道で丁寧な「できること」を、日々積み上げている。

連載:サステナブルツーリズムへの歩み 〜岐阜から発信する未来の観光
過去記事はこちら>>

文・写真=古田菜穂子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事