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2022.02.20

コロナ禍でも観光事業を足踏みさせない 岐阜県の海外プロモ戦略

コロナ禍で海外のパートナーと展開してきた岐阜県の観光プロモーションとは(c)ynote_paris

新しい年を迎え、そろそろ安定した観光プロモーションが開始できるのではと考えていたのもつかの間、驚異的なスピードで広まったオミクロン株による第6波。各地に発出されたまん延防止等重点措置により、私自身も、予定されていたシンポジウムが中止されたり、アートイベントの延期や事業内容の変更などを余儀なくされたり、さまざまな影響を受けている。このような状況下で、ますます観光におけるインバウンドの復活は遠のく気配だ。

とはいえ、海外に目を向けると、春を過ぎた頃には新たな動きが始まるのではとの予測や、観光市場はすでに動き始めているという報告もある。

実際、私のところにも欧州のある国の方から、「今年の秋、スタートアップのビジネス訪問団を送りたいが対応可能か?」という問い合わせや、「ロンドンで岐阜県の観光プロモーションを行うのはどうか」という相談が入るなど、「えっ、こんな状況で、本気?」と思うことも少なくはない。

日本にいてもできることを考える


一方、この2年間、日本での海外戦略や各地域でインバウンド対策は足踏みしている。そのぶん国内に目が向けられ、観光庁は体験できるあらたな観光コンテンツづくりを推奨しはじめ、それに呼応するように各地の自治体も国内対策に舵を切っている。

私がアドバイザーをつとめている岐阜県や、2年前から観光戦略でご一緒している兵庫県も、この時期にこそ地域の埋もれた観光資源の見直しとブラッシュアップをと積極的に取組んでいる。

これはある意味良い傾向だ。私が大切にしている「持続可能な観光=サステナブルツーリズム」の地に足の着いた実践にも結びつく。

しかし、海外戦略や海外交流を進めないでいいのかというと、そうではない。世界各国の人々が等しく困難な状況にある時にこそ、互いに助け合うことや、継続的な人々の交流もまた、サステナブルツーリズム実践のひとつだと考えている。

国内外で観光事業に携わっている人々がみな疲弊してしまったり、ドメスティックな観光ばかりになったりすれば、本来の観光産業自体が立ち行かなくなるのは当たり前のこと。実際、コロナ禍前まで日本専門で送客をしてくれていた海外の旅行会社やプロモーターの中には、規模の縮小や廃業をせざるを得ない会社も多々ある。

だからこそ、困った時はお互いさまという良き日本の文化習慣としての相互扶助の心をしっかり相手に伝えて、それを実践することは、必ず将来の糧になるはずだと考えた。海外のカウンターパートといま何ができるか、彼らが何を求めていのるかを知り、そのなかでできることを施策化すべきだと。

そこで今回は、コロナ禍以来の2年間で、私たちが海外にいるパートナーと協力して展開してきたプロモーションについて書いてみたい。海外に行かずとも、これだけのことができる証しにもなるだろう。
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文・写真=古田菜穂子

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