ビジネス

2022.02.19

出会い系から企業イベントにピボットした注目スタートアップ

Andrey_Popov / Shutterstock.com

ベンチャーキャピタルのグレイロック・パートナーズでゼネラルパートナーを務めるSarah Guoは、シアトル本拠のスタートアップ「ミステリー(Mystery)」への出資でリードインベスターの座を勝ち取るため、レストランを予約した。彼女は事前にマジシャンを手配し、手品の後に小切手と、料理メニューに模した支援プランを提示した。

「彼らの社名になぞらえてミステリーな体験を用意したが、大変だった」とGuoは話す。

ミステリーは、企業向けイベント(現状は全てバーチャル)の企画と実行を支援し、従業員の反応を追跡するソフトウェアツールを提供している。パンデミックによって大規模な集会の開催が困難になる一方で、多くの人はズームのハッピー・アワーに飽きてきている。こうした中、ミステリーは新たな方法で従業員の士気や連帯感を高めることを目指している。

同社は、2020年3月に現在のビジネスモデルにピボットしたが、それ以来、売上は急拡大し、既に1000社以上と契約を結んでいる。ミステリーは2月10日、グレイロックが主導するシリーズAラウンドで1850万ドル(約21億円)を調達したことを明らかにした。今回のラウンドには、タレントエージェンシーのEndeavor(旧WME)も参加し、ミュージシャンや、顧客のエンターテイメント企業の一部を大規模イベントに活用できるようにした。関係者によると、ミステリーの評価額は1億ドル(約116億円)に達したという。

ミステリーは、2018年にShane Kovalsky、Vince Coppola、Brennan Keoughの3人によって設立された。同社は、共通の趣味に基づいてカップルをマッチングし、デートを企画するイベント自動化ツールとしてスタートした。

「目的地に着くまでどこに行くのかわからないようなデートを企画していた」と、CEOのKovalskyは話す。サービスは一定数のユーザーから支持され、2019年にはシードラウンドで資金調達を行ったものの、パンデミックによって対面のデートができなくなったため、同社はビジネスモデルの転換を余儀なくされた。

イベントの予約や企画を行うソフトウェアは既に開発していたため、新しいビジネスモデルへの転換はスムーズだったという。パンデミックによって人との交流は主にオンラインに移行したが、仕事を自主退職する人が急増する「Great Resignation(大退職時代)」が到来する中、企業は従業員同士が交流できる方法を模索している。
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編集=上田裕資

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