経済・社会

2022.02.15 16:30

もはや「対岸の火事」ではない、欧米圏の食品原材料価格の高騰

Joe Raedle/Getty Images


実は、この会見から2週間前の1月20日、ラガルド総裁は仏ラジオ局「フランス・アンテル」の番組に出演していた。そこでは「インフレは向こう数カ月続くのか」との番組パーソナリティの問いかけに対し、「素晴らしい質問ですね」と応答。
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「物流の目詰まりや港湾の混雑などに落ち着く兆候がみられ、納期の遅延も解消し始めている」と供給のボトルネックの問題にも言及したうえで、「インフレは徐々に安定して、今後は緩やかに低下へ向かう」とのまったく逆の見通しを示していた。


クリスティーヌ・ラガルド(Thomas Lohnes/Getty Images)

ラガルド総裁は昨年12月の会見でも、インフレ抑制目的の利上げの可能性をめぐって「きわめて低い」と断言していた。このため、金融市場では今月3日の総裁の悲観的会見をきっかけに、「ECBが軌道修正を余儀なくされた」との見方からユーロを買い戻す動きが膨らんだ。
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それに伴い、外国為替市場のユーロ・ドル相場は、一時、下値のフシとされていた「1ユーロ=1.12ドル」を割り込む水準まで「ユーロ安・ドル高」が進んだが、その後は1.15ドル近辺までユーロが急反発した。

外為市場の専門家は「ECBの利上げは米国よりもかなり遅れる、とのムードが強まっていた反動」と話している。「ECB(の金融政策)は踊り場を迎えたようだ」(仏ル・モンド紙電子版)との受け止め方が支配的となり、ユーロ買いを後押しした格好だ。

欧米でのインフレは、むろん日本にとっても「対岸の火事」で済まされないのは明らかだ。実際、このところ食品の値上がりラッシュが続いている。原材料の多くを輸入に依存している国だけに、「悪い円安」への警戒論もますます勢いを増している。

連載:足で稼ぐ大学教員が読む経済
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文=松崎泰弘

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