もはや「対岸の火事」ではない、欧米圏の食品原材料価格の高騰

Joe Raedle/Getty Images

スタジオでコメントする記者の席には朝食のプレートが置かれている。その上にはパン、コーヒー、オレンジジュースなどが並ぶ。これらは「すべてインフレの影響を受けている」。記者はそう言って、最近の急激な値上がりの背景を解説した。1月に放映された仏テレビ局のニュース番組のワンシーンである。

インフレが世界経済を直撃している。特に欧米で騰勢がなかなか収まらない。米国の1月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比7.5%の上昇。前月(7.0%)から上昇が加速して、約40年ぶりの高い伸びを記録した。

ユーロ圏の1月の消費者物価指数(HCIP)速報値も、前年同月比5.1%の上昇。前月(5.0%)に比べて伸びが鈍るとの市場予想に反して、過去最高となった。この物価高騰は、エネルギー価格によって押し上げられた側面が強いが、食品の値上がりも勢いが止まらない。

なかでも未加工食品の高騰が目立つ。昨年12月には4.7%増と、前月の1.9%増から伸びが急加速。1月は5.2%の値上がりと前月を上回った。原材料価格の上昇が食品加工メーカーの収益を圧迫する構図が浮き彫りになっている。

その影響は、むろん消費者にも及ぶ。加工メーカーが一定の利益を確保しようとすれば、川下に価格を転嫁せざるを得ない。

たとえば製粉会社は、原料小麦の値上がりを受けて、小麦粉価格の引き上げへと動く。そうなると、製パンメーカーは製品価格を値上げ。こうして朝の食卓に欠かせない食品の高騰が家計を苦しめていく。

原材料価格上昇で「朝食ETF」が登場


原材料の上昇には複数の要因が絡み合う。小麦は主要生産地であるカナダでの干ばつで収穫が減少。同じく主な供給国の1つであるウクライナの情勢緊迫化も市況の高騰を招いている。

コーヒーの原料のコーヒー豆は最大の供給国であるブラジルの干ばつや霜害が響いた。「昨年は厳しい干ばつに見舞われ、今年は当てにしていたのに、この霜。本当に痛い」仏テレビ局のインタビューにブラジルの生産業者はそう答えた。
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文=松崎泰弘

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