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2022.02.16 08:00

地域住民との「対話の場」に。東原会長が「日立オリジンパーク」にかける思い


日立オリジンパークを「対話の場」に


そんな東原の想いもあり、小平記念館(展示ホール)の順路は創業者・小平の紹介から始まる。そこから、同社が社会課題の解決に挑戦してきた歴史を紹介する展示が続く。一番奥には、来場者が社会課題に対して「自分にできること」を考えるコーナー「Hitachi Future Zone」も用意した。


創業社長・小平浪平を紹介する展示

大きなスクリーンの前にタブレットが並んでいて、SDGsの全17目標に関連した質問の中から興味があるものを選択すると、自分のアバターがスクリーンに飛んでいく仕掛けだ。

「日立のオリジンを感じてもらったあとに、ご自身に向き合いながら、社会問題について考えていただくコーナーです。一方通行ではない“対話”を生み出す狙いもあります。ゆくゆくは、日立オリジンパークを地域住民との『対話の場』として、もっと活用したい」と東原は言う。


日立市を「環境のまち」に


日立は近年、その創業精神に基づいて、カーボンニュートラルの実現や「Lumada(ルマーダ)」を通じた技術提供などを進め、環境問題の改善に力を入れている。ルマーダとは、顧客データから価値を創出しデジタルイノベーションを加速するため、デジタル技術を活用したソリューション/サービス/テクノロジーの総称である。

日立オリジンパークでも、施設で使用する電力などのカーボン排出は実質ゼロとし、カーボンニュートラルを達成。ほかにも、施設建設のために伐採した樹木を内装装飾やベンチ・テーブルの什器として活用するなど、環境に配慮した設計となっている。

会長自身も思い入れのある日立市を「環境のまち」にするべく、日立オリジンパークは、将来に向けたまちづくりのビジョンを議論するための“拠点”にしていきたいという。

「まずは、日立市でどんなことができるのか、自治体と意見交換し、整理をしています。今後はフードロスのミニマム化やCO2の削減といった具体的な課題に対して、議論を深めていく必要があると考えています」

東原の理想は、市民側からの「こういう街にしたい」という思いに対して、日立が支援・貢献する形だという。

「企業から押し付けられたまちづくりは長続きしないと思うんです。だからこそ、市民の方々からからどんどん意見を言ってもらい、ともに持続的に発展をしていく街をつくっていかなければならないと思います」
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文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨 写真提供=日立製作所

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