急増する米国のオピオイド過剰摂取死、経済損失は年間1兆ドルに

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米国では、オピオイド過剰摂取による死亡に伴う経済的損失が、年間およそ1兆ドルに上る。これは、同国の合成オピオイド不正取引撲滅委員会(U.S. Commission on Combating Synthetic Opioid Trafficking)が2022年2月7日に発表したリポートで明らかになったことだ。

リポートはこれを「驚くべき金額だ」と述べ、オピオイドの蔓延が、経済や公衆衛生、公共の安全、国家安全保障のすべてを、「直接的で激しさを増す脅威」にさらしている実態を浮き彫りにしていると述べている。

この損失額は、米大統領経済諮問委員会(CEA)が2019年に発表したリポートをもとに推定された。CEAのリポートでは、2018年における「過剰摂取による死亡に伴った損失額」を年間6960億ドルと算出していた。2018年の過剰摂取による死亡者数は、現在のおよそ3分の2だった。

米国では、2020年6月から2021年5月までの1年間で、薬物の過剰摂取で死亡した人は10万人に上り、前年比で30%増加した。同時期に、交通事故や銃による暴力で死亡した人数と比較すると2倍以上だ。

死亡者10万人のうち約3分の2は、フェンタニルなどの合成オピオイドが原因だ。死亡者の年齢層はおもに15歳から45歳だったと、リポートでは述べられている。

また、オピオイド過剰摂取による死亡に伴う生産性の損失と医療費の増加、刑事司法にかかるコストは、2016年と2017年では年間約7000億ドルに上った。

合成オピオイドの過剰摂取による死亡者は全米規模で増えており、「その勢いが弱まる兆しは見られない」と、リポートには書かれている。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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