レーダーチャートで人の本当の評価をすると間違える

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さて、試合前の練習では特に問題なく動けているようです。でも実戦ではどうか? 試合が始まって、彼が守るセカンドにボールが飛ぶのをじっと待ちますが、なかなか飛びません。

飛んだ! と思ったら、T選手の正面を突く当たり。脚力(フットワークや、スピードを含めた能力)を最大限に発揮しなくてはいけない、彼の横を抜けるか抜けないか、という絶妙な当たりはなかなか出ません。

そして、走塁も。そもそも、どんなに好調な選手でも1試合に3回出塁したらいいほうですし、小走りで十分セーフになるような打球だと、脚力は発揮されません。

結局、札幌まで出かけていって、評価不能── とまではいかないものの、確信を持って「故障の影響は全くありません」と断言することは出来なかった。「ある程度問題なく動けている」という、たいそう歯切れの悪いレポートを書かざるを得なかった記憶があります。かと言って、僕が仕事をサボっていたわけでもないので仕方ありません。

全体の中で占める割合に注意


で、しばらく経ってから、ふとそのことを思い出し、待てよ... と気づいたのです。野球選手の脚力は、実は能力全体の中で、占める割合が低いのではないだろうか??

セカンドという比較的ボールの処理機会が多い、つまり脚力が重要なポジションでさえも、札幌での2試合のように、そもそもボールが飛んでこない日も少なくはなく、飛んできても正面の当たりだったりする。走塁でも、スピードが遺憾なく発揮されるような状況が少ない。

決して大事でないと言っているわけではありません。競った試合で、ゴロに追いついてアウトにできるか否か、二塁ランナーがライト前ヒットでホームに生還できるか否か、は勝敗を左右します。脚力が重要であることは、野球を少しでも見たことがある人は皆知っています。でも、そもそも、そういう状況が起こるケース自体が少ないのでは??


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という話をしたところで、冒頭のレーダーチャートに戻ります。

ここには、“各項目の比重”という考えが欠落しています。全項目の満点の数字を一緒にしてしまっています。項目1は10点満点だけど、項目2は5点満点、つまり“倍の重要性がある”という可能性を考えなくてはいけません。

もちろん、たまたま全部同じというケースもあるでしょうが、評価の枠組みを作る人はそこまでしっかりと考えなくてはいけないのです。


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次回(8月4日公開)は、問題社員を優秀社員と間違えないために、特に考慮すべき評価項目について、考えてみたいと思います。

>> 連載:メジャーリーグで学んだ「人を評価する方法」

編集=宇藤智子

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